コロナなのに高級品が飛ぶように売れている! 富裕層を動かす「消費の玉突き現象」の正体:行動制限がきっかけ(3/5 ページ)
コロナ禍で日本全体の消費支出は減少しているとされる。一方、富裕層はさまざまな高額品をどんどん購入している。そのメカニズムは「消費の玉突き現象」だと筆者は説明する。
地方百貨店の「特選売り場」が好調
ファッション業界は全滅という話が日本では定着しています。アパレル業界はリストラが続き、百貨店も苦戦というニュースばかりです。
一方、百貨店でラグジュアリーブランドなどを扱う「特選売り場」は好調です。しかも、地方百貨店でその傾向が顕著です。
そごう・西武(千葉などの5店累計)では、特選売り場における20年8〜12月の売り上げが前年比5%増でした。高島屋高崎店の特選売り上げは70%増、高島屋立川店が13%増、大丸松坂屋百貨店の大丸神戸店は7%増、松坂屋名古屋店が3%増という状況です。
また、インバウンド比率が大きく、特選売り場の売り上げが前年を割り込んだ都心型店舗も、国内顧客に限定すれば20年8〜12月は阪急うめだ本店が12%増と好調を維持しています(参考記事:増加する富裕層がけん引 コロナなんてどこ吹く風、百貨店特選の20年秋冬好調ブランドを検証)。
有名ブランドの人気が高まる
ファッションの中でも紳士服業界は特に厳しいとされています。スーツを着る機会が減ったためです。一方、伊勢丹新宿本店メンズ館のメンズデザイナーズ売り場は好調です。20年8〜12月の売り上げは、19年と同等の実績でした。各社がマイナスを続ける中、画期的な数字です。この傾向は21年になっても継続し、21年2月は前年同期比20%増となりました。
日本百貨店協会が発表した21年3月における紳士服部門の売上高はマイナス22.3%です。東京地区(3月)だけを見ても、売り上げはマイナス13.5%。全体は良くありません。しかし伊勢丹新宿本店の外商は売れています。理由はメンズラグジュアリーブランドが好調だからです。
20年8〜12月の売り上げが前年比で30%増加したディオール。同20%増のジル サンダー。そして、富裕層から圧倒的に支持されているドルチェ&ガッバーナ。この3ブランドは世界でも売れていますが、日本の富裕層を中心にコロナ禍でさらに人気が高まっています。
三越伊勢丹ではこのような状況を受け、富裕層の取り込みに向けて、外商強化を中期経営計画で打ち出しています。外商で取り扱う商品やサービスを拡充し、店頭バイヤーと外商部が連携。店頭にない商品でも富裕層に提案できるようにする方針です。今後は顧客データをより細かく分析し、個別対応を進めていくことになります。
このように日本の高級品市場はコロナ禍でも確実に動いています。むしろ活況を呈しています。なぜでしょうか?
「富裕層の人口構成の変化」と「移動制限による消費の変化」という2つの要因が見て取れます。
関連記事
- レゴランドってそんなにひどいの? 家族を連れて行ってみた
「隣接する商業施設からテナントが撤退」「水筒の持ち込み禁止」などのニュースで注目を浴びているレゴランド。ネット上では酷評する声もあるが、実際はどうなのだろうか。記者が家族を連れて遊びに行ってみた。 - スシローとくら寿司 「価格帯」と「シャリ」から見えた戦略の“決定的”な違いとは
大手回転寿司チェーンのスシローとくら寿司。標準的な寿司の重さはほぼ一緒。しかし、価格とシャリの違いから戦略の違いが見えてきた。 - 新成人が「欲しい車」ランキング 3位はフォルクスワーゲン、2位はBMW、1位は?
ソニー損保が新成人のカーライフ意識調査を実施。普通自動車運転免許の保有率や欲しい車が明らかに。どんな傾向があるのか。 - 店内は客が少ないのに25年連続増収 西松屋がコロナ禍でも絶好調の理由
コロナ禍でも業績好調の西松屋チェーン。店内は客が少ないのに、なぜ成長を続けられるのか。同社の“非常識経営”に迫る。 - 「お菓子ドンキ」と「お酒ドンキ」に行ってみた 品ぞろえから見えた“初挑戦”の狙い
「お菓子ドンキ」と「お酒ドンキ」がオープンした。グループ初となるお菓子とお酒に特化した品ぞろえをしているのが特徴。プレオープン日に取材した結果は?
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.