「大塚家具」は再建できるか 危機意識強める「ヤマダ」とのコラボで売り場に変化:長浜淳之介のトレンドアンテナ(6/6 ページ)
大塚家具の業績が改善している。黒字転換が現実的に見えてきた。背景にあるヤマダグループの危機意識とは。
匠大塚が大塚家具に与えたダメージ
会社を追われた勝久氏は、勝之氏と同年、匠大塚を創業。大塚家具をつぶしに掛かった。社長に復帰してからの久美子氏は鳴かず飛ばずになってしまったが、匠大塚の影響も大きいのではないかと思う。匠大塚は現在6店と規模は小さいが、大塚家具から久美子氏に不満がある社員が移っているだけでなく、存在自体が骨肉争いのイメージを醸し出し、大塚家具へのダメージになっていたからだ。
久美子氏の中価格路線も、ほころびを見せてくる。ニトリやイケアは、生活雑貨・インテリア雑貨が豊富で、雑貨の売り上げ比率が上昇している。日本に限らず、先進諸国ではタワーマンションに住むような富裕層と、そうでない人の格差が拡大しており、マーケットの二極化が進む。中価格はなかなか支持されにくい価格帯になってきている。消費者の購買力の低下に、ニトリやイケアは照準を合わせてきている。
例えば、ニトリは「デコホーム」という雑貨専門店を展開しているし、20年にはホームセンターの島忠を買収している。イケアも売り場面積の4分の1くらいは、食器や収納などの生活雑貨なのである。
残念ながら大塚家具は、雑貨部門の開発に思いが至らず、ホームセンター化に乗り遅れた。それが不振の一因だ。
家具と家電を融合した売り場づくり
現在、ヤマダ傘下に入った大塚家具では、家具と家電を融合した売り場づくりを進めている。
前例のない取り組みなので、トライ&エラーが繰り返されるだろう。しかし、もともと定評があった生活シーンを想定した家具の展示に、家電を合わせて行くことで、より生活実感に近づける予感がある。
一方、ヤマダデンキの売り場でも家具が販売されるようになり、家電と家具のある暮らしを見せていく展示が実践されている。
「ヤマダデンキは良い商品をより安くを、もちろん貫きます。しかし、時代は変化していて、従来のイメージを払拭(ふっしょく)しないと未来はないと、認識しています」(大塚家具・広報)。これは山田昇会長以下、ヤマダグループで共有されている危機意識だという。
大塚家具は創業家では再建できなかったが、ヤマダが新たな風を吹き込み、家具と家電をコンシェルジュのような丁寧な接客で売っていく。全く新しいビジネスモデルを確立できるのなら、ニトリ、イケアとも明確に差別化され、画期的な家具店になるのではないか。期待したい。
著者プロフィール
長浜淳之介(ながはま・じゅんのすけ)
兵庫県出身。同志社大学法学部卒業。業界紙記者、ビジネス雑誌編集者を経て、角川春樹事務所編集者より1997年にフリーとなる。ビジネス、IT、飲食、流通、歴史、街歩き、サブカルなど多彩な方面で、執筆、編集を行っている。共著に『図解ICタグビジネスのすべて』(日本能率協会マネジメントセンター)など。
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