コロナ禍でも黒字のアパホテル 常識破壊の”強さ”と悲願の10万室が生んだ“功罪”:創業50年(4/5 ページ)
アパホテルが2021年5月10日に創業50周年を迎えた。いまや日本を代表するホテルブランドとして圧倒的な知名度を誇る同社。コロナ禍の中、2020年11月期連結決算で黒字を確保したという発表は、ホテル評論家としても衝撃的だったと筆者は語る。
快適ベッドメークや大浴場もいち早く採り入れたアパ
オリジナルベッド
最近さまざまなホテルで見られる“デュベスタイル(羽毛布団を掛け布団カバーで包むスタイル)”のベッドメークも、アパホテルは率先して導入してきた。さらにベッドそのものについても注目すべき点がある。アパホテルは、オリジナルベッド「Cloud fit(クラウドフィット)」を開発し、大規模な導入を進めてきた。フワフワした体感は好みも分かれるだろうが、いずにしても宿泊特化型タイプのホテルブランドでオリジナルマットレスは希有(けう)だ。
大浴場
アパホテルでは、大浴場をかなり前から積極導入していることでも知られる。アパホテルの客室に入ると、ベッドの上に折り鶴が置かれているのを記憶している方もいるだろう。これは「ビジネスホテルで温泉旅館のおもてなし(旅館=大浴場)」というコンセプトの具現である。
また、サウナや露天風呂を設けた店舗も多く、アパホテルを選ぶポイントというゲストの声もある。ただし、ビジネスホテルという範疇(はんちゅう)でいえば、例えば共立メンテナンス(東京都千代田区)が運営する「ドーミーイン」など、大浴場へ徹底してフィーチャーしたブランドが際立っており、大浴場がアパホテルの強みとまでは言い切れないのもまた事実である。
以上のように、大画面テレビ/デュベスタイルのベッドメーク/大浴場など、今となってはビジネスホテルのスタンダードとなったサービスをいち早く採り入れていたのもまたアパホテル。賛否渦巻くホテルブランドであるが、利用者目線を視座とするホテル評論家としては、客室のみに着目しても先見性という点で注目してきたブランドというのは間違いない。
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