コロナ禍で飲食業界は「格差社会」に? スシロー・コロワイド・鳥貴族に学ぶ、生き延びるカギ:小売・流通アナリストの視点(1/4 ページ)
コロナ禍に大きく影響を受けた2020年度に関する飲食業界の決算が出そろった。影響の大きかった/小さかった業態、そしてその業態の中でもうまく適応できた企業とできなかった企業とで「格差社会」となるなか、生き残りのカギはどこにあるのか。有名企業の戦略から解説する。
本記事の原稿を書いている時点で、緊急事態宣言発出が10都道府県に出されている。3大都市圏を中心に、コロナ禍による経済活動への制約が再び拡大しつつある状況だ。大都市の百貨店は生活必需品の範囲を拡大して営業している店舗も増えたようだが、外食店に関しては、時短制約に加えて、アルコール類の提供ができなくなっている。このことから、今回のダメージはこれまでにも増して厳しいものになっているようだ。
変異株への置き換わりもあってか、緊急事態宣言やまん延防止等重点措置も、しばらくは解除も難しそうであり、さらなる長期戦となる可能性もある。そんな中、本格的に経済への影響が大きくなったコロナ禍の年度ともいえる2020年度が終わり、多大な影響を受けた外食企業の決算も出そろった。今回はそんな外食企業の決算状況から、あらためてコロナの影響について考えてみることにしたい。
図表は主な外食企業の業績(売上高増減率、営業利益率)を並べたものだが、業態によってコロナ禍の影響がまちまちなのが分かるだろう。
まず、このコロナ禍でも、日本KFC、モスフードサービス、日本マクドナルド、物語コーポレーション、FOOD&LIFE COMPANIES(スシロー)、くら寿司は、増収かつ営業黒字を達成しており、洋食ファストフード、焼肉、回転寿司がコロナに強いジャンルだったという結果となった。
逆に、大きなダメージを受けたのが、居酒屋各社とロイヤル、セブン&アイフードのファミレス、ラーメンの日高屋、幸楽苑などとなった。ロイヤルに関しては、ファミレス「ロイヤルホスト」のイメージが強いが、実は施設内(空港、サービスエリアなど)のレストラン運営、ホテル事業、機内食事業といった旅行レジャーと密接した事業も手掛けており、これらのセグメントの落ち込みが大きく影響した。セブン&アイフードも施設内レストランの比率が高いことが凶と出た。なお、ラーメン中心の業態は汁物特有のテークアウトしづらい点が減収につながったとされる。
ただ、個別には事情はあろうが、コロナの影響が業態によってこんなに違うのはなぜだろうか。
関連記事
- 「先送り」したいきなり!ステーキと「先手」を打った鳥貴族 コロナ禍で明暗分かれた「見通し」の差とは?
コロナ禍の傷がまだ癒えない外食産業だが、「勝ち組」と目されていた企業間でも明暗が分かれた。今回は、いきなり!ステーキと鳥貴族を例に、小売・流通アナリストの中井彰人氏が解説していく。 - コロナ禍でも従業員が結束して客数2倍! “収束後”を見据えて飲食店が取り組むべき「重要事項」とは
度重なる緊急事態宣言で飲食業界が苦しんでいる。こんな時だからこそ、「ビジョン」が大切だと筆者は主張する。危機を乗り切り、アフターコロナを勝ち抜くために何が必要なのか。 - スシローとくら寿司 「価格帯」と「シャリ」から見えた戦略の“決定的”な違いとは
大手回転寿司チェーンのスシローとくら寿司。標準的な寿司の重さはほぼ一緒。しかし、価格とシャリの違いから戦略の違いが見えてきた。 - 「洋服の青山」、400人希望退職の衝撃! 窮地のスーツ業界が生き残るには
「洋服の青山」で有名な青山商事が、400人の希望退職を募集すると発表した。コロナ禍によるスーツ離れもあり、窮地のスーツ業界。生き残るためにはどうしていけばよいのか。 - 「国道16号」を越えられるか 首都圏スーパーの“双璧”ヤオコーとオーケー、本丸を巡る戦いの行方
コロナ禍で人口流出が話題となる首都圏だが、「国道16号線」を軸に見てみると明暗が大きく分かれそうだ。スーパー業界も16号を境に勢力図が大きく変わる。そんな首都圏のスーパー業界勢力図を、今回は解説する。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.