コロナ禍で飲食業界は「格差社会」に? スシロー・コロワイド・鳥貴族に学ぶ、生き延びるカギ:小売・流通アナリストの視点(2/4 ページ)
コロナ禍に大きく影響を受けた2020年度に関する飲食業界の決算が出そろった。影響の大きかった/小さかった業態、そしてその業態の中でもうまく適応できた企業とできなかった企業とで「格差社会」となるなか、生き残りのカギはどこにあるのか。有名企業の戦略から解説する。
コロナ禍では、「新型コロナウイルス感染拡大防止」という観点から、経済活動に対して社会的に要請される「3密防止」のための制約が各企業に課された。
外食産業にとってどんな制約になるかといえば、主には、営業時間の制限、客席使用率の制限、密集立地への制限、という3要素に集約される。例えば、緊急事態宣言やまん延防止等重点措置は、休業や時短の要請であり、営業時間の制限が課される。
3密防止の対策として、これまでの席数を減らして営業させられるのは、キャパシティーを強制的に減らされるという深刻な問題である。特に店舗および人口密集地域である大都市中心部では、昼間人口を減少させるため、多くの企業がテレワークの導入を進めた。その結果、昼間人口が都心部から居住地域である郊外部へと移動したことで、従来なら「好立地」であった都心立地の外食は大きなマイナス影響を受けている。
外食産業の基本数式は「席数」「回転」「客単価」と「時間帯」
外食産業における売り上げの基本的構成要素は、
【席数(キャパシティーであり、物理的な客数の上限)× 回転(物理的客数限界を何回転させるか)× 客単価】
× 時間帯数
といった構造である。おおむね1日は「午前アイドリングタイム」「ランチタイム」「午後アイドリングタイム」「ディナータイム」「深夜帯」といった5つの時間帯に分けられ、この時間帯ごとに「席数」「回転」「客単価」の掛け算で売り上げを組み立てていくわけだ。
平常時には、このうち「回転」「客単価」を上げつつ、効果的な営業時間を選んで、売上を極大化するというのが基本的な考え方となる。しかし、コロナ禍では営業時間が制約され、席数の使用制限も課されている。これが当然顧客の回転を制約することとなり、業態ごとの命運を分けたのだ。
夜間営業時間の制約や、アルコール提供への制約は、ディナータイム、深夜帯を営業の中心とする業態の居酒屋、ディナー中心のレストランへの大きなダメージとなった。また、商業施設や大型施設(オフィス、空港、ホテルなどの施設)のフードコートや施設内レストランは、施設の休業や時短によって大きな影響を受けることになった。
都市部での昼間人口の減少は、都心立地(オフィス街やビルイン)の外食企業には大きなダメージとなった。そして客数減少を補うためには、テークアウト、宅配へのシフトをするしかないが、これは提供するメニューによって対応可能かどうかが決まってくる。
コロナ禍と業績の関係性は「偶然」?
これらから考えると、郊外立地、もしくは都心と郊外のバランスがとれた立地で、ディナー時間帯への依存度が低く、テークアウトの適した商品提供といった企業がコロナ禍では有利だったということになる。業績の結果を見ても、これまでにもテークアウト比率が高く、またディナー依存が低い、郊外店舗も多いファストフードや回転寿司の業績が良好なのは、こうしたコロナ禍による制約とビジネスモデルの「偶然の一致」といった向きが強く、今回の業績の優劣は個社の経営に帰するべきではないともいえるだろう。
ただ、バランスの取れた店舗立地、アイドリングタイムの活用、席数にとらわれない売り上げ創出の手法といった考え方自体は、コロナ禍に関係なく従来の外食産業に共通した課題であった。こうした課題に前から取り組んでいるということ自体は、個社の経営として評価されるべきなのであろう。
例えば、コロナ禍でも業績好調な回転寿司大手スシローは、単にコロナ禍へ偶然に適合しているということではなく、それまでに積み重ねてきた改善努力による成果だといってもいいだろう。
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