ハラスメント専門家から見た、リモハラの境界線:上司の悩み(2/3 ページ)
もはやニューノーマルの代名詞ともなったリモートワーク。一方で社員と管理職間では新たなハラスメント論争「リモハラ」問題も起こっています。超大手官公庁や企業、中小零細サービス業界まで、危機管理の専門家としてハラスメント防止の伝道をしている筆者が解説します。
3.パワハラ? 指導? 上司の悩み
結論から言います。ハラスメント防止とその対応をさまざまな職場で訴えてきた立場からすれば、リモートもリアルも「ハラスメント」かどうかで判断されます。パワハラ防止法で厳しい規制ができた一方、セクハラと違ってパワハラは、被害を訴える者が「単に不快に感じた」だけでは成立しません。
パワハラ3要件を満たすものがパワハラとされます。(パワハラ3要件:(1)優越的な関係を背景に行われる(2)業務の適正な範囲を超えている(3)身体的/精神的な苦痛を与えたり、就業環境を害すること)
要するに業務上必要な指導や命令はパワハラではないのです。指導先で「何かあればすぐハラスメントと言われるのが恐くて部下指導もできない」という声をよく聞くのですが、私はこうした定義を用いて指導や命令がハラスメントではないことを説明します。業務上の指導や命令はハラスメントではないからです。
4.リモハラの境界線
上記(2)の事象もこの業務性の視点で明確に区分できます。
(1)と(2)
頻繁な作業進捗監視が「必要な」業務なら適正ですが、それは生産ラインのように、ミスがあれば危険も生じるなどの必要性がある場合です。リモートワークの事務仕事において、四六時中監視が必要な合理性は通常考えられません。単に上司がヒマでやることがないのか、業務成果を判断する管理能力が無いかのどちらかの可能性が高いでしょう。社長に常時カメラONでなければならない合理的理由を説明できるでしょうか。
(3)と(4)
業務上の指示はハラスメントではありません。では私室や私服は業務とどう関係するのでしょうか。インテリアやアパレルなどの業務で、私室や私服のセンスが業務上欠かせないなどあるのであれば合理性があるかも知れませんが、ちょっと現実的にあり得ない気がします。業務上の必要性がないものであれば、ハラスメントになる可能性がきわめて高いでしょう。
(5)と(6)
まあどう見ても単なるセクハラ以外にないでしょう。業務上の必要性があるとは考えられないし、そもそも業務時間外の飲食強要は完全にハラスメントになります。
関連記事
- 「ガーガー」音はどうすればいいのか 頭を突っ込む「防音グッズ」が面白い
いびきの「ガーガー」音に悩まされている人も多いのでは。そんな悩みを抱えている人向けに、防止グッズがたくさんある。ちょっと調べたところ、防止ではなく、防音グッズも。どんな商品があるのかというと……。 - 「世界一勤勉」なのに、なぜ日本人の給与は低いのか
OECDの調査によると、日本人の平均年収は韓国人よりも低いという。なぜ日本人の給与は低いのか。筆者の窪田氏は「勤勉さと真面目さ」に原因があるのではないかとみている。どういう意味かというと……。 - 7割が「課長」になれない中で、5年後も食っていける人物
「いまの時代、7割は課長になれない」と言われているが、ビジネスパーソンはどのように対応すればいいのか。リクルートでフェローを務められ、その後、中学校の校長を務められた藤原和博さんに聞いた。 - 「70歳まで会社にしがみつく人」が結局、会社を弱体化させてしまうワケ
定年を引き上げるニュースが相次いでる。現行の60歳から65歳にする企業が増えてきているわけだが、筆者の窪田氏はこの動きに懸念を抱いている。「長く働くことができていいじゃないか」と思われたかもしれないが……。
関連リンク
Copyright (c) INSIGHT NOW! All Rights Reserved.