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なぜ? YKKが「定年廃止」を決めた理由 65歳以上の評価・報酬はどうなるのか独自性(1/3 ページ)

YKKグループが4月、定年制度を廃止した。日本企業では、当たり前の制度として定着している定年だが、その廃止を決めた理由は何か。その背景を取材した。

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 ファスニング事業や窓などの建材事業で有名なYKKグループが2021年4月、定年制度を廃止した。日本企業では、当たり前の制度として定着している定年だが、その廃止を決めた理由は何か。その背景を取材した。

 定年は、よくよく考えれば不思議な制度だ。本人の能力、気力、体力に関係なく、一定の年齢を迎えたら、有無をいわさず解雇される。日本同様に定年制度が存在した英国では、2011年の法改正で定年制が廃止され、年齢を理由に解雇することは差別と見なされ、法的にもNGだ。米国などは、採用面接時に年齢を聞くことすら労働関係の法律が許していない。

 定年制度の歴史的背景を調べると、過酷な業務に従事する労働者を保護する役目があり、高度経済成長時には企業側の負担を軽減し、新陳代謝を円滑に進める役割があったという。それだけに、一概に疎むべき制度ではないのだが、元気で活力のあるシニアが増加し、人生100年などといわれる現状に、そぐわない印象が強いのは否めない。ちなみに、定年延長や廃止を実施すること自体は、決して違法ではない。

 そのような世情を反映してか、日本でも定年制を廃止する企業が増えている。廃止する一般的な理由として(1)少子化を背景にした人手不足の解消、(2)スキルやノウハウの継承などが挙げられる。

 これに対し、YKK経営企画室広報グループの松倉優貴氏が、開口一番に掲げた廃止の理由は、実にユニークだ。定年制度が「経営理念にある『公正』、人事理念『自律と共生』に基づいた考え方である『年齢、性別、学歴、国籍にとらわれない真に公正な人事を目指す』に反するため」という。

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2021年度経営方針説明会で示された、YKKグループの国内事業会社の新人事制度の概要

 YKKは21年4月、それまでの65歳定年を廃止した。前述の理念の下、これまでも、11年から取り組んでいた「働き方“変革への挑戦”プロジェクト」など、人事に関する施策を実施してきた。

 13〜20年にかけては、それまでの60歳定年を段階的に65歳まで引き上げ、そして21年4月に定年廃止に至った。多くの企業が「60歳定年で、65歳まで再雇用可」という制度を導入している中、YKKの「65歳定年で、それ以上が再雇用」という制度は、時代を先取りしていたように感じるが、今回はその上限すら一気に取り除いたことになる。

65歳以上の評価制度・処遇はどうなるのか

 そこで知りたいのは、65歳オーバーのシニア社員に対する評価制度や処遇に対する考え方だ。

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