もう「人事は信用ならない」とはいわせない! シロウト人事の成功例に学ぶ、現場に信用される人事部門の作り方:「現場の抵抗」は人事にも問題あり(2/4 ページ)
「人事は信用ならない」と現場に思われがちだが、いったいその原因はどこにあるのか。現在「マイクロ人事部長」として複数社の人事に携わる筆者が、「シロウト人事」だったころの成功事例とともに、現場に信用される人事の作り方を解説する。
シロウト人事はまず「社員とのあいさつ」から始めた
そこで、まずはきっかけ作り、あいさつから始めることにしました。最初に、社内でよく使われている「お疲れさまです」というあいさつを変えて「こんにちは」とあいさつすることにしました。そもそも、その社員の仕事内容すら知らない人事に「お疲れさまです」とあいさつされても、社員との距離は縮まらない。そう考えて、全ての社員とのあいさつに「こんにちは」という言葉を使うようにしたのです。
するとどうでしょう。初めは、突然新任の人事に「こんにちは」とあいさつされ戸惑っている社員も、徐々に応じてくれるようになりました。後で聞いたのですが、陰でどうやら「人事のこんにちは課長」と筆者は呼ばれていたようです。
「10秒ルール」と「30秒ルール」で社員情報を蓄積
少しずつ「こんにちは」のあいさつは浸透していきましたが、もちろんそこから深い会話にはなかなかつながっていきません。
そこで筆者は、あいさつをする際に「10秒ルール」を自身に課してみることにしました。「10秒ルール」とは、あいさつを交わした社員と「10秒間会話をする」というものです。社員と10秒会話をするためには、あいさつをしてから、だいたい「1往復半」の会話が必要になります。
「こんにちは」
「あれ?今日はちょっと顔色が冴えないけれど、何かあったのかな」
「ええ、じつはここのところ仕事が忙しくて」
「大丈夫?あまり無理せずにね。身体を壊したらつらいから」
例えばこのような感じで会話が進みます。たった10秒の会話ですが、どうも様子が気になった社員とのあいさつを、社員の名前と話したことをExcelにメモしていきました。しばらくすると、手元に「気になる社員リスト」ができ、少しずつ社員の情報量が増えていくことになりました。
3カ月ほど、「こんにちは」から10秒の会話をして、その内容をExcelにメモする日々が続き、手元の情報量もかなり増えてきました。そこで今度は「10秒ルール」を「30秒ルール」に変えてみることにしました。しかし、この「30秒ルール」はかなり大変でした。相手の社員の特徴などの情報がないと、会話は30秒も続きません。30秒の会話を持たせるためには、だいたい「2往復半」の会話が成立するテーマが必要になります。その社員にしっかりと注目していないと、なかなか情報は得られず会話は続かないのです。しかし、これにより手元のExcelのメモは、さらにどんどん増えていくことになりました。
今考えれば、社員にとっては迷惑だったかもしれません。しかし、筆者のExcelには、社員の特徴や気になること、困っていることなどがストックされていき、徐々に現場部門で今起こっていること、うまくいっていない点などが見えてきたのです。例えば、とある部門では、仕事にストレスを抱えているメンバーが多くいる。内容を見てみると、その部門の上司のマネジメントに課題があることが分かってくる。こうして、あいさつを通して会話してきた内容がストックされ、情報量が増えることによって組織全体が見えるデータに変化していきました。
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