真っ先に変えるべきは日本人の「思考」 オードリー・タンが貫く「透明性」と「多様性」:「前例がない」をやらない理由に(4/5 ページ)
新型コロナの封じ込め戦略など、台湾の存在感が抜きん出ている。その中心人物として活躍しているのが、デジタル担当政務委員大臣のオードリー・タン氏だ。コロナ禍を通じて、日本が台湾に学ぶべきことは何か。
「双方向のコミュニケーション」の重要性
オードリー氏が提案し、後に台湾の政策に多大な影響を及ぼしたのが、デジタルプラットフォーム「vTaiwan」と「Join」だ。いずれも、台湾に居住する国民なら誰でも意見を投稿したり、他の人の意見に「いいね」したり、コメントでディスカッションしたりできる。
一つの提案に5000人以上の賛同者が集まると、行政側は必ず請願として受け付け、書面にて回答を出さなければならない。SDGsにまつわるもの、かつ幅広い部門が関わるような提案については、ステークホルダーと関連の政府部門が参加して、議論することになっている。
「vTaiwan」や「Join」には、日々多数の書き込みがされており、なかでも「気候変動対策」にまつわる議論は関心度が高いという。実際に、Joinへの提案で法制化された提案もある。
「17年に書き込まれた『プラスチック製の皿やストローを禁止すべき』という提案は、またたく間に5000票を集め、ついに段階的にプラスチックストローを禁止する方針が打ち出されました。この提案を書き込んだのが当時16歳、高校1年生の王宣茹(おうせんにょ)さんだったことも世間を驚かせました。選挙権のない女子高生でも社会を動かすことができるという象徴的な出来事でした」
いずれのプラットフォームもハンドルネームやプロフィールの登録が必要になるが、匿名でも構わない。匿名だからこそ、忖度(そんたく)なく言いたいことが言える一面もあるはずだ。そして、なんといっても提案への反響が可視化され、行政からの正式なフィードバックが届くのは革命的だ。
日本でも20年9月に行政改革担当大臣に就任した河野太郎氏が、「規制改革ホットライン」を設置したが、意見が殺到したために11月に募集停止され、現在も停止されたままだ。今後、復活することがあっても現在の施策では不十分といえよう。
「オードリー流のデジタル民主主義を見習って、開かれた政治・社会を目指していくならば一方通行の意見を受け付けるのではなく、双方向のコミュニケーションが求められます。台湾のようにデジタルをうまく活用することで、若者の政治参加を促し、主体性を育むことにもつながります。こういったデジタルプラットフォームは政治だけに限らず、一定規模以上の企業でも導入する価値があるのではないでしょうか」
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