鉄道と脱炭素 JR東日本とJR西日本の取り組み:杉山淳一の「週刊鉄道経済」(9/9 ページ)
2021年5月26日に参議院で可決した「地球温暖化対策推進法の改正法案」は、地球温暖化対策として、CO2など温室効果ガスの削減への取り組みを求めている。CO2削減では自動車業界の話題が突出しているが、鉄道業界はどのようにしていくつもりだろうか。
企業の負担増は国民が広くまかなう必要がある
JR四国、JR北海道、JR貨物については、脱炭素への努力、推進するとしながらも、具体的な目標を明言していない。環境対策に投資するほどの経営的な余裕がないからだろう。環境コストは景気の安定した企業は負担しやすく、厳しい経営環境の企業は負担できない。地方鉄道の多くは環境負担まで手が回らないだろう。既存のエンジンの水素化、次世代バイオディーゼル対応、あるいは環境対策車両の新規導入について、国や自治体の支援が必要だ。
鉄道事業に限らず、国が脱炭素社会に取り組むためには、中小企業向けの環境対策費用支援が必要だ。同時に技術開発を促し、環境投資に必要なコストを下げていく。
その財源はどうするか。国が支援しろというだけでは無責任だ。「地球温暖化対策推進法」で、国民が一体となって地球温暖化対策に取り組むと定めたからには、国民が環境対策費用を広く負担する必要がある。環境目的税として消費税を上げる一方で、脱酸素に逆行するモノやサービスだけ増税する方策が考えられる。例えば、自動車の新車登録から13年目と18年目に重量税が上がるような考え方だ。
私たちの生活でも異常気象による被害が出ている。緩やかだった地球温暖化が、見える形となってきた。日本で生まれたアカウミガメがメキシコまで回遊できるようになった背景には、地球温暖化で太平洋の水温が上がったことがあるという。しかし環境対策、CO2削減は即効性がない。一人一人が関心を持ち、小さな対策を積み上げていく。鉄道事業の脱炭素への取り組みもその1つ。
確かに環境対策、CO2削減に即効性はなく結果も見えにくい。しかし、
「気が付いたら地球が大変なことになっていた」となるか、
「気が付いたら地球が住みやすくなっていた」となるか。
100年後、それ以降のために、ゆっくり、確実に取り組む必要がある。
杉山淳一(すぎやま・じゅんいち)
乗り鉄。書き鉄。1967年東京都生まれ。年齢=鉄道趣味歴。信州大学経済学部卒。信州大学大学院工学系研究科博士前期課程修了。出版社アスキーにてPC雑誌・ゲーム雑誌の広告営業を担当。1996年よりフリーライター。IT・ゲーム系ライターを経て、現在は鉄道分野で活動。鉄旅オブザイヤー選考委員。著書に『(ゲームソフト)A列車で行こうシリーズ公式ガイドブック(KADOKAWA)』『ぼくは乗り鉄、おでかけ日和。(幻冬舎)』『列車ダイヤから鉄道を楽しむ方法(河出書房新社)』など。公式サイト「OFFICE THREE TREES」ブログ:「すぎやまの日々」「汽車旅のしおり」。
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