会社公認「働かない制度」 “ITが好きな”企業が導入したワケ:毎月最大20時間(4/4 ページ)
フューチャースピリッツが「会社公認 働かない制度」を2016年6月にスタートさせた。どんな制度なのか。
「1つは、完全な性善説で運用しているということです。決め事やルールが必要だというのであれば、詰めるべき内容はいくらでもあります。しかし、まずは相手を信じて一緒にやっていこうという共通理解のうえで進めることにしました。会社が社員を信じることが大前提です。2つ目は制度を作るだけでなく、運用するということです。制度をつくって『はい、できたので使って』では、硬直化して使われなくなってしまいます。実際に使ってもらうような目配りと工夫が必要です」
工夫の一つが、社内に理念を浸透させるための施策だ。広報が主導して、広報誌に制度を利用している社員を紹介したり、「働かない制度」の情報をまとめた冊子(PDF)を作成している。冊子には、自社の理念に掲げる「コアバリュー」と結びついている様子を記している。
そして、このコアバリューとの整合性があることが、普及浸透の3つ目のポイントである。フューチャースピリッツのコアバリューは「未来への貢献」「安心と信頼」「成長と挑戦」の3つで構成されており、3つ目の「成長と挑戦」にリンクするというわけである。
また「制度を使いたいけど、本業の仕事量が多くて使えない」という場合もあるだろう。そうしたケースについては「業務分散をするようにして、いつでもドアは開けておくようにしています。みなし残業ラインを超える人がいないか毎月監視し、業務が明らかに偏っていたら産業医を交えてアラートをあげるなど、負荷が高すぎる人を放置しないように心掛けています」(川田氏)
業務の負荷を下げることができれば、制度を活用する余裕も生まれてくることが期待できる。
会社としてめざすのは、「全社員の半分が利用する」こと。現状は社員の4分の1から3分の1程度の利用だが、より利用率をアップさせたい考えである。
現在も、社長自ら当事者や周囲の社員の反応を把握し、個別にケアしたりしているが、社員に愛される制度となるよう、今後も利用しやすい職場環境づくりに取り組んでいく意向だ。
(取材・文 江頭紀子)
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