特権階級? 「勝ち組的トンデモ発想」が生む、就活セクハラの闇:河合薫の「社会を蝕む“ジジイの壁”」(1/3 ページ)
近鉄グループHDの採用担当者による、就活を利用した不適切行為が明らかになった。調査によると、就活などでセクハラを経験した人は約4人に1人。なぜ、このような行為がなくならないのか。
また、そう、またもや「就活」を悪用した不適切行為が明らかになりました。
近鉄グループホールディングスの人事部採用担当の男性社員が、インターンシップに参加していた女子大学生をLINEで呼び出し、和食を食べ、酒を飲ませ、揚げ句の果てにタクシーでホテルに連れて行ったといいます。
報道によれば女子学生は、「エントリーシートの添削をしてくれるというので、その誘いに乗ってしまいました」とのこと。近鉄の社内規定では、個人携帯のメールやLINEなどの使用を禁止、就活中の学生と業務外で個別に会うことも禁止しているそうです。同社は6月8日付けで男性社員を懲戒解雇処分にしました。
まったく、いったい何度、立場を利用したトンデモ行為が繰り返されるのか。
2019年2月に、ゼネコン大手の大林組に勤める27歳の男性社員が、OB訪問に来た女子大学生にわいせつ行為をした疑いで逮捕。男性社員はパソコンを見ながら面接指導をすると言って、学生を自宅マンションに誘いこみました。
同年3月には、就職活動でOB訪問に訪れた女子大学生を居酒屋で泥酔させ、女子大生の宿泊先のホテルでわいせつな行為をした疑いで住友商事元社員の24歳の男性を逮捕。被害者から住友商事側に被害の連絡があったため、男は懲戒解雇されました。
この2つの事件は、どちらも、就活中の大学生とOBやOGをつなぐマッチングアプリがきかっけでした。当時、登録している社会人のほとんどは企業側が公認しているユーザーで、一部の“非公認”のボランティアユーザーと呼ばれる社会人も含まれていたため、件のゼネコン会社の“事件”以降、ボランティアユーザーを中止したり、面談のガイドラインを作成したりと企業側は対応を強化しました。
そして、今度はLINEです。しかも、OB・OGではなく、正真正銘の「人事採用担当」による不適切行為。「エントリーシートの添削」を餌に、自分の身分を利用したのです。
こういった事件が起こるたびに、女子学生の脇の甘さが指摘されますが、それは全くのお門違いです。就職という大きな人生の節目で、学生たちはみな「ちょっとでもいい会社に入りたい」と必死です。もっとも、今の就活の在り方や、安定志向=大企業志向の高まりには思うことはたくさんあります。
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