コロナ禍で「銀のさら」絶好調 創業社長が語る“稼ぐ”仕組みとライバルが淘汰された背景:長浜淳之介のトレンドアンテナ(3/5 ページ)
宅配寿司「銀のさら」が好調だ。創業社長は「ウーバーは脅威ではない」「宅配寿司が宅配ピザより難しい」と熱弁する。どういうことかというと……。
宅配寿司初の全国チェーンを目指す
こうして、98年にサンドイッチ店の一角で、宅配寿司を始めてみた。案外と好調で、宅配をするのならば寿司のほうが市場が広く、原価も安く済むことが分かってきた。
サンドイッチというと、日本人が思い浮かべるのは三角サンドで、サブウェイのようなオープンサンドは今も一般的でない。自分たちで市場をつくらなくてはならず、使用するトマトやレタスの価格も意外と高い。パンを焼いて具材を挟んで400円で売っても、さほど利益は出なかった。
一方、寿司は日本人なら誰でも知っているし、トロをさっと握るだけで700円くらい取れる。サンドイッチとは商売の筋が全然違うと判断し、本業を宅配寿司にシフトした。
2000年にはブランド名を「寿司衛門」から「銀のさら」に変更。翌01年には、「牛角」「サンマルク」「まいどおおきに食堂」「タリーズコーヒー」などのFCを次々と成功させ、飛ぶ鳥を落とす勢いであったベンチャー・リンクと業務提携して、宅配寿司初の全国チェーンを目指した。
当時のベンチャー・リンクは、後に没落の一因となる大きな弱点を抱えていた。店舗を出したくても適当な物件がなく、FCオーナーと契約した後に店舗がなかなか開けられないケースが続出していたからだ。その点、店内飲食スペースが不要な宅配寿司は、四等、五等の立地でも成立する。立地に左右される一般の飲食店に比べれば、店舗開発がしやすかった。
銀のさらは01年10月にFC募集を開始。ベンチャー・リンクとの提携効果はすさまじく、わずか9カ月後の02年7月には、100店舗を突破。その4カ月後の02年11月には200店舗に達した。同年、本社を東京に移転している。
立地が悪くてもブレークした業態に、持ち帰り寿司の「小僧寿し」という先例があったが、スシローを始めとする4大回転寿司チェーンに押されて縮小を余儀なくされていた。入れ替わるように銀のさらが入っていった側面もあった。
また、街の寿司店も回転寿司に押されて閉店していったが、出前の需要を銀のさらが代わりに取っていった。
こうして一気にライバルチェーンを蹴散らし、銀のさらは宅配寿司で圧倒的な地位を築いた。ベンチャー・リンクは残念ながら倒産したが、ライドオン・エクスプレスは自力で13年に東証マザーズ市場へ上場。15年には、東証一部に指定替えとなっている。
なお、宅配寿司のみならず宅配ピザも含めて、自前の配送網を持つフード宅配の国内上場企業は、ライドオンエクスプレスHDだけだ。銀のさらの店舗数は今年3月末時点で357店となっている。
関連記事
- レゴランドってそんなにひどいの? 家族を連れて行ってみた
「隣接する商業施設からテナントが撤退」「水筒の持ち込み禁止」などのニュースで注目を浴びているレゴランド。ネット上では酷評する声もあるが、実際はどうなのだろうか。記者が家族を連れて遊びに行ってみた。 - スシローとくら寿司 「価格帯」と「シャリ」から見えた戦略の“決定的”な違いとは
大手回転寿司チェーンのスシローとくら寿司。標準的な寿司の重さはほぼ一緒。しかし、価格とシャリの違いから戦略の違いが見えてきた。 - 「100円×3個=301円」問題でセブンが公式に謝罪 見習うべきは「イオン方式」か
「税込100円×3個=301円」問題で混乱が起きたセブン。お客が困惑した根本原因は事前告知が不足していたことだ。ただ、イオンが採用する価格表記を採用する道もあったかもしれない。 - 「生ビール190円」の原価率は85%? お客が3杯飲んでもしっかり利益が出る仕組みとは
「生ビール1杯190円」という看板を見かける。安さでお客を引き寄せる戦略だが、実は隠されたメリットもある。どんな狙いがあるのか。 - 新成人が「欲しい車」ランキング 3位はフォルクスワーゲン、2位はBMW、1位は?
ソニー損保が新成人のカーライフ意識調査を実施。普通自動車運転免許の保有率や欲しい車が明らかに。どんな傾向があるのか。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.