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“暗号スマホ”とはどんなモノか 「FBIのビジネス流儀」はとことん:世界を読み解くニュース・サロン(4/5 ページ)
FBIの暗号化メッセージアプリ「ANOM」を使った国際おとり捜査で、800人以上が逮捕されたという。「暗号」「おとり」といった言葉が出てくると、映画の世界を想像するが、どのようなモノなのか。
ANOMを広めた
それにしてもFBIは、どのようにしてANOMを広めたのか。触れ込みは「超安全なスマホまたはアプリで、監視には絶対にかからない」というものだった。
オーストラリアを例に見ると、最初は犯罪者「市場」に50台を投入し、口コミで評判を広げた。1年後には数百人が利用するように。それがあっと間に、世界90カ国で1万台以上が売れている。1台2000ドルと考えると、単純計算で2000万ドルの売り上げである。その後も、オーストラリアやドイツ、オランダ、スペイン、セルビアを中心に利用者はどんどん増えていった。
とにかく「トロイの盾」作戦は、徹底した工作だった。麻薬密売など違法行為に手を染める犯罪者たちを摘発するためには、ここまで徹底してやらなければいけないのかもしれない。捜査資料などを読んでみると、捜査員らの執念すら感じる。これが「FBI流ビジネス戦略」なのだろう。
一方で、FBIのやり口を見ていると、国家の後押しによって世界シェアを広げている企業の姿が思い浮かぶ。サービスの土台となる技術は他国などから盗み、それを国内の企業に横流しし、国が潤沢な補助金などを出して値段を低く設定できるようにしたり、競合他社を市場に入れないようにしたり、さまざまな妨害を行う。どことは言わないが、こういう企業は実際に存在している。FBIの「トロイの盾」と、仕組みは同じだ。
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