社内ハラスメント「対策していない・不十分」9割 被害・加害者ともに男性:コロナ禍特有の「コロハラ」「リモハラ」なども
「嫌がらせ・いじめ」などの意味を持つハラスメント。19年には育休から復帰した男性社員の関西転勤を不当だとSNS上に投稿した叫びが炎上したことも記憶に新しい。女性に対するマタハラや結婚をほのめかすようなマリッジハラスメントなどを耳にする機会は減ったような気がするが、一方でパワハラやモラハラは根強く残っているようだ。今は被害者も加害者も男性が多いことが調査から分かった。
キャリア調査機関の「Job総研」を運営するライボ(東京都渋谷区)が「2021年ハラスメント実態調査」を実施した。調査によると、社内ハラスメント防止対策を「していない」「しているが不十分」と回答した割合は約9割だった。
社内のハラスメント防止策について「十分な対策だと思う」と回答した割合は5.2%と1割未満。「十分ではないが対策はしている」(51.4%)、「特に対策はしていない」(41.0%)が合計約9割に上る。社内のハラスメント対策の不十分さが顕著に表れた。具体的な対策(複数回答)としては、「相談窓口を設ける」、「ハラスメントガイドラインの設定」などが挙げられた。
過去1年間で職場内でハラスメントを感じたか尋ねたところ、「感じた」「当事者ではないが社内にハラスメントがある」と回答したのは47%だった。被害は「パワハラ」が79.7%で最多。その他に「モラハラ」(44.2%)やコロナ禍特有の「リモートハラスメント」や「コロナハラスメント」なども挙げられた。
被害者の男女比は男性が65.7%、女性が34.3%と、男性がより被害を受けていることが分かった。また、「誰からのハラスメントか」についても、76.2%が「男性」と回答し、被害者・加害者ともに男性が多かった。雇用形態では正社員、年代別では20〜30代、勤続年数は3年以内が被害者属性として最多だった。
ハラスメントの内容(複数回答)としては、「個人の能力を否定するような言動」(57.2%)、「第三者がいる前での罵倒」(46.8%)、「役職や地位を振りかざすような言動」(43.9%)がTOP3となった。
ハラスメント被害の対応については、3分の1の人が「何もしなかった」と回答。理由(複数回答)としては、「相談できるような環境がない」(47.8%)や「職務上の不利益につながりそう」(43.5%)、「自分が我慢すればいい」(31.9%)などが挙げられた。抗議できず泣き寝入りする状況が見て取れる。また、「被害を受けているのは自分だけではないから」(11.6%)という社内でハラスメントがまん延している実態を示す回答もあった。
今回の調査からハラスメントに対する防止策は不十分で、被害にあっても相談できる環境や社内の対策が整っていないことが分かった。対策は講じているが、利用が進まないことや、制度の形骸化も懸念される。
20年6月1日から大企業に対し、パワハラ防止策を講じることが義務化された。22年4月からは中小企業にもパワハラ防止法が施行される予定だ。防止策の研修や面談が「あるだけ」の状態にならないように企業側もハラスメント対策を徹底する必要があるだろう。
調査は、6月4〜11日にインターネットで実施。1年〜10年以上勤務している全国の20〜69歳の男女374人を対象とした。
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