10年で116万台減少! 「世界一の自販機大国ニッポン」はなぜ衰退したのか:スピン経済の歩き方(4/5 ページ)
「日本は世界一の自販機大国」という話を聞いたことがあるが、本当にそうなのか。一人当たりの台数は世界一だが、機能面でいえば世界の潮流から遅れているようで……。
時代の流れに乗り遅れた背景
このようなシビアな現実がつきつけられると、次に気になるのはなぜ「世界一の自販機大国」であったはずの日本が、新しい時代の流れに乗り遅れてしまったのかである。
政治が悪い、法律が悪い、島国根性が悪い、などいろいろなご意見があるだろうが、筆者は日本の自販機ビジネスの「多様性のなさ」が原因ではないかと思っている。
日本自動販売システム機械工業会によると、日本の自販機の56.4%は「飲料自販機」だ。その次に多いのが、コインロッカーや自動精算機などの「自動サービス機」(32.1%)である。日用品雑貨自販機は5.2%で、食品自販機になるとわずか1.7%しかない。
つまり、日本のことを「世界一の自販機大国」というが、正確には「世界一の飲料自販機大国」というべきなのだ。
「まあ、自販機なんてそんなもんじゃないの?」と思うかもしれないが、ここまで露骨な「飲料自販機一強」という国は珍しい。同じく日本自動販売システム機械工業会の「自販機普及台数と年間自販金額の日米比較」というデータがある。
これによれば、米国の飲料自販機の普及台数は約300万台で、日本は約250万台とそれほど大きな差はないのに対して、食品自販機は米国が約143万台で、日本は7万台弱ほどで20分の1となっている。
この「圧倒的な格差」こそが、日本が世界のスマート自販機の潮流に乗り遅れた最大の原因ではないか。米国の自販機は飲料だけではなく、スナック菓子、クッキー、アイスなどさまざまなものを売っている。自販機に多様性があるので、テクノロジーの進化にともなって多種多様なビジネスが生まれる。作りたてのサラダや、でき立てのラーメンを自販機で売ってみようというスタートアップも登場するのだ。
しかし、日本では食品を自販機で買うカルチャーは定着しなかった。昔、高速サービスエリアなどに、ハンバーガーや冷凍食品の自販機が設置されたが、時代の流れで消え去ってしまい、たまに目にすると「へえ、こんな自販機あるんだ」と驚かれるマイナーな存在となってしまったのだ。
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