AI与信解禁 メルペイに聞く「何が変わるのか?」(2/2 ページ)
4月に改正割賦販売法が施行され、AIやビッグデータを使った与信審査が解禁された。メルカリ子会社で決済サービスを営むメルペイは、これに対応を「AI与信」を提供する計画だ。しかし、もともとメルペイはメルカリの売買履歴データやメルペイでの決済データを用いて、与信を行っていたはず。法改正で何が変わるのだろうか?
オルタナティブデータをどう活用するか?
ちなみに、年収や自宅の状況、さらに勤務先や勤続年数などの伝統的な与信に使うデータに対し、決済データや銀行口座の入出金情報などの情報を一般にオルタナティブデータと呼ぶ。
与信に使われる情報としては、もう1つ、指定信用情報機関として利用者の借り入れ情報を集約しているCICがある。分割払い事業者や貸金事業者は、誰がいつどれだけの額を借り入れて返済状況がどうなっているかを、CICに登録する義務がある。さらに事業者は、契約当初にCICの情報を確認することで、利用者が借り過ぎていないかなどを確認することが義務付けられている。
メルペイは、メルカリで遅滞なく取引が行われているかどうかや、メルペイの利用状況といったオルタナティブデータを与信に活用しているパイオニアの1社だ。翌月払いのメルペイスマート払いの段階では、オルタナティブデータを中心に与信を行っていた。
しかし割販法で照会が義務付けられる定額払いのスタートからは、CICへの照会を開始。「徐々にCIC情報の活用度合いを上げていっている」(信川氏)という。
世の中の多くの事業者は、CICの情報をメインとして与信を行い、最近オルタナティブデータを与信に活用する流れが出てきている。一方でメルペイではオルタナティブデータメインだったところに、徐々にCIC情報も利用し始めている状況だ。
「メルペイは信用サービスをオルタナティブデータから始めたことから、業界の中でも相対的にオルタナティブデータを使っている度合いは高いだろう」と信川氏。
オルタナティブデータの活用というと、AIによる分析の精度が話題になることが多いが、信川氏はサービスとの連携が重要だと説く。「メルペイの情報を別の会社が使っても意味がないだろう。オルタナティブデータは機能と表裏一体だ。データだけあっても、サービスがないと意味がない。サービスと密結合していくほど、重要性は上がっていく」(信川氏)
メルペイでは、分割払いの精算予定と手数料(金利に相当)の状況をリアルタイムにグラフ表示し、利用者が将来いくら返済しなくてはいけないのかが簡単に分かるようにUIを工夫している。返済方法も、当初はコンビニでの現金払いだけだったが、メルカリ売り上げなども利用できるよう仕組みを変更してきた。
「社内でも何度も議論し、返済期間がどれだけあって手数料がいくらなのかは透明にしていくことが重要だと考えている。審査にAIを活用すると同時に延滞率を下げる取り組みをしないと、結果的にお客さまに合った使い方にならず、金融包摂に結びつかない」(信川氏)
こうしたサービス側の改善によって、延滞率はどんどん改善しているという。
メルペイが目指すのは金融包摂の実現だ。属性情報によって一律にNGを出すのではなく、オルタナティブデータを用いて信頼度を測り、これまで分割払いが利用しずらかった人にもサービスを提供することを目指す。「申し込み時点ではCICを使うが、勤め先がアルバイトだから一律ダメということはなく、少額から始めて、利用や返済のデータに基づいてお客さまに最適な与信枠にチューニングしていく」(信川氏)という考え方だ。
多くのフィンテック企業が、属性情報とCIC情報に依存した現在の与信状況からの脱却を目指してオルタナティブデータの活用を進めている。日本は誰でも銀行口座が作れるという意味では金融包摂が進んでいるが、借り入れについてはそうでもない。フィンテック起業家の多くが、起業直後はクレジットカードも作れなかったし住宅ローンも通らなかったことを、サービス立ち上げの動機として語っている。オルタナティブデータの今後の活用法に注目が集まる。
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