ウーバーイーツ不法就労問題の本質は性善説でない理由:古田拓也「今更聞けないお金とビジネス」(2/3 ページ)
性善説は“お粗末なシステム”への免罪符ではない。22日には日本でウーバーイーツ事業を手掛ける日本法人のウーバージャパンのトップと、当時コンプライアンス担当をしていた元社員の2人が東京地検に書類送検されるニュースが報じられた。
プラットフォーマーの責任全うするTwitter
たとえスタートアップ企業であっても、近年では大型出資や提携などにより、一足飛びに規模を拡大するようなケースも増加してきた。規模の拡大に伴って、社会的影響力も増大し「プラットフォーマーとしての責任」もより重くのしかかってくる。サービス開始当初はそれほど問題とならなかったことが、サービス人口の急増に伴って大きな問題に発展する事例は決して少なくない。
そのような成長痛にも似た問題にスピーディな対処ができるかが、今後のベンチャービジネスの成功を左右すると筆者は考える。
この点、Twitterはプラットフォーマーとしての責任を全うする活動にも力を入れている印象だ。今や有名人・有名企業だけでなく政府機関や国家元首が自身の発言を届けるまでの社会的影響力を得るに至っている。その反面、自殺をほのめかす投稿や、フェイクニュース・陰謀論の拡散を助長し、実社会の人々の行動に影響を与えるという負の側面も色濃くなってきた。
これらの問題に対してTwitterは、18年にはまず自殺防止の新機能を実装している。現在、Twitter上で「自殺」や「自傷行為」などと検索すると、特殊な検索結果の出現を確認できる。それは検索結果の最上部に「あなたの思いをそのまま聞かせて」というメッセージとともに東京自殺防止センターへの案内が表示されるというものだ。
実際にこの機能によって何人が現実として救われたかは定かではないが、自殺に関する投稿を「個人のつぶやき」と見なして対応しないのと、プラットフォームとして解決すべき課題とみなしてなんらか策を講じるのとでは、姿勢に大きな差があるのではないか。
次に、フェイクニュースや陰謀論については、2020年の米国大統領選の時期に顕著となった問題だ。Twitterは20年11月の選挙に先立って、「記事を読まずにリツイートするユーザーに警告を出す」機能を実装し、フェイクニュースの拡散を抑制しようとする動きを見せた。そして21年1月には、8000万人以上もフォロワーがいたトランプ前大統領のアカウントを「暴力行為を助長」するとして凍結するなど、思い切った対応が目立つ。
一方で、NTTドコモが運営するdカーシェアでは、個人間カーシェアブランドの「マイカーシェア」上で、借り手が貸し手の車を無断売却する問題が相次いだ。このケースについて、ドコモ側の利用規約上では、「ドコモ自体が車の共同利用契約の当事者にならないので、補償責任はない」ことになっており、場を提供する立場としてのスタンスに批判の声を向ける動きもみられた。これが決め手となったかは定かではないが、21年8月末で同サービスは終了するという。
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