「料理がツラい」 子育て奮闘中のライオン社員が作った新サービスが、愛されるワケ:近所の飲食店が、1週間夕食を作る!(1/3 ページ)
ライオンは今年2月、LINEで1週間の夕食作りを近所の飲食店に依頼できるテークアウトサービス「ご近所シェフトモ」をスタートした。サービスを起案したのは、子育てと仕事の両立に励む社内起業家の、廣岡茜さん。サービスが生まれた背景や、テークアウトに特化した理由などを聞いた。
ライオンは今年2月、夕飯作りに悩む人と、近所の飲食店をつなぐテークアウトサービス「ご近所シェフトモ」をスタートした。ユーザーは、LINEで1週間の夕食作りを近所の飲食店に依頼できる。料理の手間を軽減し、子育て中の共働き世帯を支援するという。
単身の筆者は思った。「デリバリーでよくない?」と。家にこもって仕事をすることの多い筆者とって、デリバリーサービスで豊富なメニューから食べたいものを選ぶ時間はいい気晴らしとなっている。
なぜ、ライオンはテークアウトに特化したのか。それで果たして事業はスケールするのか。起案者のイントレプレナー(社内起業家)廣岡茜さんに聞いた。
料理を作らなくても、幸せな食卓は作れる
ご近所シェフトモは、2019年に開催されたライオン社員による新価値創造プログラム「NOIL(ノイル)」を経て事業化に至った。NOILはLIONの裏読み。創業130年になる老舗メーカーの事業をリデザインする目的で始まった。
テークアウトに特化した理由は、仕事や保育園のお迎えの帰りに立ち寄れるからだという。デリバリーでは、指定した時間までに自宅に戻らないと受け取れないが、仕事と子育てを両立しているとそれが難しいことがある。
アイデアは、出張が多く多忙な夫と幼い娘をもつ廣岡さんの日常から生まれた。
「料理は愛情表現」と思っていた廣岡さんは、自分も働きながら毎朝お弁当を用意し、夕飯も作った。しかし、結婚前から気づいていた。自分は料理が好きではない。栄養バランスを考え、食材を買い込み、調理し、おいしそうに盛りつける。多くの人がさも当たり前のようにやっている(やってもらっている)ことだが、相当なスキルと時間の捻出が必要だ。
夫の実家から送られてくる野菜には、たけのこや山菜など調理が難しいものもあった。消化できない野菜で冷蔵庫が埋まり、腐っていくのを見ては憂鬱になった。義母の厚意を無駄にしていることに罪悪感を覚えた。
初めての育児で心身ともに疲弊したのを機に、廣岡さんは料理を手放した。料理から解放された廣岡さんは、違う形で愛を伝えていこうと決めた。バタバタせずに子どもの話を聞いてあげること。近所に家族で行けるおいしいお店を探し、娘の好きなメニューを見つけること。買ってきたお総菜を食べるとき、娘の分はアンパンマンの皿に盛ってプチトマトを添えること。家族3人が集まれる時間は少ないけれど、楽しくおしゃべりして過ごすこと。それにはまず、自分自身が笑顔でいなければ。
「料理に“手抜き”も“サボり”もない。料理を作らなくても、幸せな食卓は作れる。私はそう信じています」
「負けまくった」過去 名もなきサービスが育つまで
ご近所シェフトモが正式リリースされて約4カ月、夕食を作ってくれる加盟店は都内に35店舗、ユーザーは2000を超えた。ここまでの道のりは、決して楽なものではなかった。
事業化のステップは、廣岡さんがそれまで10年開発に携わった洗濯用洗剤とは全く異なるものだった。生まれたばかりのご近所シェフトモは、何もかも自分たちで作り上げていくしかない。
関連記事
- 新卒応募が57人→2000人以上に! 土屋鞄“次世代人事”のSNS活用×ファン作り
コロナ禍で採用活動に苦戦する企業も多い中、土屋鞄製造所の新卒採用が好調だ。2020年卒はたった57人の応募だったが、21年卒は2000人以上が応募と、エントリー数が約40倍に急増した。その秘訣を聞いた。 - 社員2000人「7割がリモートワーク」実現 KADOKAWAが“出社前提・紙文化”から脱却できた理由──きっかけは「マンガ」作戦
2020年11月、ところざわサクラタウン内に新オフィス、所沢キャンパスをオープンしたKADOKAWA。所沢キャンパスの稼働時をめどに、ABW(Activity Based Working)を掲げ、場所にとらわれず充実した働き方を目指す改革を約5年かけて進めてきた。出社して紙の原稿を回す文化の大規模出版社が、コロナ禍で社員2000人の7割リモートワークを実現するまで、どのような軌跡があったのか。 - 新チームでも飲み会要らず! 1時間・オンラインで「個性や強みを理解し合う」方法とは?
人事やマネジメント層の方は、テレワーク中に入社・異動したメンバーから「入社後しばらくたったが、このチームで働いているという実感が湧かない」「業務以外の会話がなく、常に一人で仕事をしている感覚がする」「困った時に誰に相談すべきか分からない」──といった声を聞くこともあるのではないでしょうか。本記事では、実際に集まらなくてもメンバー同士が1時間で相互理解を深められる方法をご紹介します。 - 「一度昇格したら降格しない」人事制度が限界です。ジョブ型雇用に変更すべきでしょうか?
社員の高齢化に伴い、「一度昇格したら降格しない」人事制度が限界を迎えている──このような場合、どうしたらいいのだろうか。人事コンサルタントが解説する。 - 1on1ミーティング、研修受け放題サービス導入……なぜ失敗? 良かれと思った育成施策の落し穴
あらゆる人事施策には、メリットとデメリットがあります。他社にとっては良い施策でも、自社で導入してみると合わなかったということも起こり得ます。今回は、マネジメントや人材育成に対する誤解を紹介します。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.