オリンピックで「人流」は増加するのか 見落とされている過去の“事実”:長浜淳之介のトレンドアンテナ(2/5 ページ)
合理性を欠く新型コロナウイルス感染症対策に耐え切れない飲食店が続出している。「緊急事態」と「まん防」はいつになったら終わるのか。筆者がそろそろ「正常化に向けた準備を始める時期」と考える理由は?
大型のスポーツイベントがあると外出は減る
新型コロナウイルス感染症対策分科会の尾身茂会長が、「オリンピックが始まると人流が増える」と主張している。これに対し、飲食店・小売店関係者から疑問の声をよく聞く。過去、国際的なスポーツイベントが開催されると、人流は減り、店舗の売り上げは減っていたからだ。
日本フードサービス協会の市場動向調査から検証してみよう。
2002年に開かれた、サッカーのFIFAワールドカップ日韓大会の主な開催月は6月だ。同協会は、「サッカーワールドカップの影響でファミレス(FR)、パブ・居酒屋、ディナーレストラン(DR)が苦戦」としている。既存店の売り上げは、FRが92.0%(前年同月比、以下同)、パブ・居酒屋が90.0%、DRが91.9%と前年割れ。客数もそれぞれ94.8%、88.9%、94.3%と不振だった。
16年に開かれた、リオデジャネイロオリンピックはどうか。同年8月の全店における売上高は、FRが96.2%、パブ・居酒屋が88.5%、DRが99.7%とやはり前年割れだ。客数はそれぞれ、96.6%、89.3%、100.0%であった。全体概況では「リオのオリンピックや立て続けに発生した台風なども客足を鈍らせる要因」としている。
18年に開かれた平昌オリンピックの開催月(2月)の全店データでは、売上高はFRが102.2%、パブ・居酒屋が96.6%、DRが105.9%となった。客数はそれぞれ、99.4%、97.4%、104.6%であった。日韓サッカーワールドカップやリオデジャネイロオリンピックと違った結果になった。全体概況では「平昌オリンピックによる外出控えなどから、客足に影響が出たところもあったものの、建国記念日の振替休日もあり」好調に推移したとしている。DRはテレビCMの効果などがあったとのことだ。
普通、国民の関心が高い大規模スポーツイベントが開かれたら、外食では顧客減の危機と考える。外出や外食を控え、家でテレビにくぎ付けになる人が多いからだ。百貨店やショッピングセンターにとっても、人々が外出を控えるから、決してプラスではない。
最近は、外食も賢くなって、パブで観戦イベントを開いたり、レストランで開催国の料理フェアを行ったりしてオリンピックに興味がない層の集客に成功するケースが増えている。確かに、オリンピック期間中、ファンが広場や店舗に集まって騒ぐようなケースを心配するのは分かる。しかし、これまで紹介したような過去に「外出が減る傾向があり、居酒屋に行く人が減った」事実はもっと知られてもよいのではないだろうか。
念には念を入れて、万全の対策は必要だが、国民の不安を過度に煽るべきではないだろう。
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