オンキヨーの衰退、“経営陣だけ”を責められないワケ 特異すぎる日本のオーディオ市場:本田雅一の時事想々(5/5 ページ)
オンキヨーがホームAV事業を手放す。この衰退を招いたのは近視眼的で戦略性のない経営だと筆者は指摘するが、経営陣だけを責める気にはならないという。なぜかというと……?
日本のメーカーがこの動きに応答できていない理由は、日本の高級オーディオ販売店がコンポーネントの組み合わせ提案が行えないアクティブスピーカーや、複数機能が統合される傾向の強いネットワークオーディオ製品の販売に積極的ではないからだろう。
実際、LINNやKEFのようなアプローチは多くのメーカーが採用しているが、日本市場向けにはWi-Fi機能を搭載したモデルがラインアップされないことがほとんどだ。
例えばDaliが販売している本格的Wi-FiオーディオシステムのCALLISTOシリーズは、日本での展示が行われたものの最終的にはローンチしなかった。大きな理由は販売店が好まないからで、他の多くの欧州ブランドを扱う代理店はWi-Fiシステムあるいはアクティブスピーカーを持ち込まない。
販売店が積極的に扱わなければ、高級オーディオは売れないからだ。
そうした海外市場との乖離(かいり)が少しずつ進んだ結果、日本のオーディオ市場の特殊性が高まり、日本を主戦場とするオーディオメーカーは変化するチャンスを失ってきた。このままでは、従来のプレーヤー、コントロールアンプ、パワーアンプ、スピーカーと、それぞれのモジュールを接続するケーブルなどで構成されてきたオーディオ製品の枠組みとは異なる方向に動いている市場トレンドから置いていかれてしまうだろう。
日本の高級オーディオメーカーは、部品選別や設計、音質チューニング、チューニング通りの音を出せるだけの丁寧な組み立て工程などで良い製品を作ってきたが、業界全体が変化しなければ、ストリーミング音楽配信サービスを中心に、いま一度、市場が変化しようとしている中、本当の意味でのガラパゴス化が進むだろう。
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