連載
“鉄道観光ビジネス”再起動、失われた2年間をどう取り戻すのか:杉山淳一の「週刊鉄道経済」(2/10 ページ)
沖縄県を除く緊急事態宣言解除、新型コロナウイルスワクチン接種の進ちょくを見越して、鉄道旅行ビジネスが活気づいてきた。冷え切った観光需要を「元通り」にするには、「元通り」の商品展開では足りない。そこで「工場夜景ツアー」「観光急行列車」「おみやげ品割引」など、注目の事例を紹介しつつ、今後の新施策に期待したい。
第2回の企画はもっと早く組み立てられていたけれども、緊急事態宣言を受けて発表が延期されていた。緊急事態宣言から6月21日にまん延防止等重点措置へ移行したため、6月22日に発表し、6月25日に受付開始。
主に鉄道ニュース媒体に紹介され、告知期間は約3日だった。それにしても1分半の完売である。参加希望者は15時を待ってPCやスマホに向かい、その瞬間を待っていたことだろう。
最大参加人数は94人で、鶴見線の電車4両1編成を貸し切るため1両当たり約24人。ソーシャルディスタンスに配慮して、ロングシートにゆったりと座る配置。下車観光から戻るたびに添乗員が除菌スプレーを散布して回るなど感染対策も万全だ。こうした配慮が伝わったことも人気の理由といえそうだ。
JR東日本などは、鶴見線で水素燃料電池車両の試験運行を今年度中に始める。新エネルギーの関心が高まっており、新型車両をテーマとした「学びのツアー」も期待できる。
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