「トップセールスに頼りすぎ」 駅で気絶するまで働いた元モーレツ営業マンが挑む、“営業プロセスの再構築”:ここが変だよ! 日本の営業(2/3 ページ)
「日本の営業は、トップセールスの一子相伝となっていることが多い」──そう話すのは、営業・マーケティング組織作りの支援などを行うUNITE(東京都港区)の代表取締役社長、上田啓太さんだ。働き過ぎて駅で倒れた経験もあるという上田さんは、自身のキャリアから、日本の営業組織がどのように変わるべきだと考えているのか。話を聞いた。
ここが変だよ! 日本の営業組織
UNITEを立ち上げた当初は、自分でできることを周囲の企業に提供することから事業を始めた。その際に、インサイドセールスの立ち上げに課題を感じている企業が多く、それができる人材が少ないということに気が付いた。
そこから組織化を行い、インサイドセールス組織の立ち上げ・運用支援を中心とした、営業・マーケティングのコンサルティング事業会社としてサービスを充実させてきた。
上田さんがこれまで多くの営業組織とかかわってきた中で、最も問題視していることがある。それは、「トップセールスの力に頼りきっている」ことだという。
また、思うように営業成績が伸びないなどの事象が起こった際も、同じように「営業マンのせい」になる。そういった「“人の力”で何とかしようとする」文化があるという。
上田さんは、商談が成功するかどうかは「プロセス・製品やサービス・人」で成り立っていると説明する。
「思うように売れない場合、その3つのどこかに問題があるのですが、日本企業の多くはまず『人』を何とかしようとするんです。トップセールスのAさんはできているから同じようにやれ、Bさんの実力不足で受注率が低いなど。一方で、『プロセス』に目を向ける経営者やリーダーは少ないです」
上田さんはこのように、プロセスの見直しがなされていないことが、日本の営業組織の多くが非合理的な原因だとみている。「営業に関するツールはいろいろと登場しているのに、活用する企業側で、しっかり数字データを記録して、改善につなげることが当たり前になっていません」と上田さんは話す。
「サボりたくてサボっている人や、結果出したくない営業マンって、本当に少ないと思います。つまり、改善すべきは『人』ではなく『プロセス』なんです。ここが変だと思っています」
成約率を高める、データを活用
上田さんは、理想の営業組織を「10件商談して10件売れること」と表現する。
「普段10件の商談から、1件しか成約していないのであれば、その他9件の中身がどうなっているのかを知らないと、改善できません。だからデータを取る必要があります。営業効率が上がれば、価値を提供できるお客さんの総量が増えます」
そのための手段が、SFAをはじめとするデータの管理ツールだ。現場の営業マンが正しい情報を入れてくれないなど、SFAの運用に悩む企業は多いが、このように営業プロセスを改善し、多くの顧客に価値を提供することを目的に、その手段としてSFAを活用しているという考え方をブラさないことが大切だという。
目的が組織内に浸透した後は、オペレーションを徹底する。1日1回SFAの入力の確認をする、週1回ダッシュボードで指定の数値の進捗(しんちょく)を確認するなどだ。
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