今どきそんな評価では社員はどんどん辞めていく! 間違いだらけの人事改革(3/3 ページ)
リモートワークの浸透による働き方の変化に伴い、「社員の適切な評価が困難、納得感が得られない」「生産性を上げるために、ジョブ型評価制度に移行する必要性があった」など、人事評価制度の課題は山積み。新しい評価制度を稼働させた結果、想定外のトラブルにつながったという会社の“失敗談”から、経営層が持つべき「人事評価制度の正解」を探る。
まず、人事評価制度が持つ本来の目的――「人材を育成し、社員も組織も豊かになる」ということを全社員で共有する。これが1つ目のポイントです。そのためにまずやるべきなのは、「どうやって組織を豊かにしていくのか」を社員全員に明確に打ち出すことです。これを、経営理念やビジョンを盛り込んだ「経営計画」で明示します。
経営計画を通じて、組織の未来を社員と共有し、その実現のための仕組みとして人事評価制度に取り組むのです。この考え方を浸透させることができれば、自分たちの豊かで幸せな未来づくりに必要なものが人事評価制度ということになるわけですから、全社員が自ら前向きに取り組んでくれるようになります。
“みんなが豊かに!”この目的に向かって全社員で取り組むことで、改革を成功に導くことができるのです。
人事評価制度の「本番」は導入後!
2つ目のポイントは、人事評価制度導入後の運用を重視して、トップが先頭に立って改革を推進することです。
先に述べたように、人事評価制度は「豊かな会社の未来を実現するため」に組織全体を改革するプロジェクトです。“組織全体”に関わるものですから、トップ自らプロジェクトを導いていかなければ決して成果には結びつきません。
そして、この成果を生むプロセスは、人事評価制度の設計にあるのではなく、あくまでも導入後の運用にあります。なぜなら組織そのものが成長していくということがゴールなので、人事評価制度が構築できた時点でこのゴールにたどり着くことはあり得ないからです。
導入後が本番だという気構えで、社長自らその運用状況をモニターしながら改善を指示し、組織を成長に導いていくこと。これが最も重要な成功のポイントなのです。
この2点にこだわった人事評価制度に取り組むことで、社員の心を惹きつけ、個々がイキイキと活躍しながら成長し、どんな環境でも進化し続ける強い組織に生まれ変われるはずです。
山元浩二(やまもと こうじ)氏のプロフィール
日本人事経営研究室株式会社、代表取締役。経営計画と人事評価制度を連動させた組織成長の仕組みづくりコンサルタント。10年間を費やし、1000社以上の経営計画と人事制度を研究。双方を連動させた「ビジョン実現型人事評価制度®」を480社超の運用を通じて開発、オンリーワンのコンサルティングスタイルを確立した。中小企業の現場を知り尽くしたコンサルティングを展開、 “94.1%”という高い社員納得度を獲得するともにマネジメント層を強化し、多くの支援先の生産性を高め、成長し続ける組織へと導く。その圧倒的な運用実績を頼りに全国の経営者からオファーが殺到している。自社組織も経営計画にそった成長戦略を描き果敢に挑戦、創業以来19期連続増収を続け、業界の注目を集めている。
著書に「小さな会社は経営計画で人を育てなさい!』(あさ出版)、「小さな会社の人を育てる賃金制度のつくり方」(日本実業出版社)などがある。2020年2月14日に15刷のロングセラーを記録した著書の改訂版である「【改訂新版】3ステップでできる!小さな会社の人を育てる人事評価制度のつくり方」(あさ出版)を出版。累計14万部を突破し、多くの経営者から注目を集めている。
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