オフィスに「居ながら改装」で業務への影響を最小化 “創造性を生む場”をどう作ったのか:ボッシュ渋谷の事例から(2/4 ページ)
仮オフィスに引越しすることなく、1、2フロアずつ工事を進めていく「居ながら改装」。居ながら改装を行ったボッシュは、渋谷オフィスをどのように“創造性を生む場”として作り上げていったのか。
フロア間のコミュニケーションを促進するデザイン
続いて、今回の改装によってボッシュ渋谷本社ビルのオフィスがどのようにリニューアルされ、それに伴ってオフィスの使いかたがどのように変化したかを見ていくことにしよう。
本社ビルは全体を1本の大きな木に見立て、「IoTree(TreeとIoTの造語)」をコンセプトとしている。まず、4〜9階および13〜16階のオフィスフロアを見ていこう。
改装前、ボッシュのオフィスフロアは多くの企業で見られるようなグリッドデザイン(島型レイアウト)のオフィスだった。社員一人一人にデスクが割り当てられ、それぞれのデスクには書類がうず高く積まれていたという。
「そうした状況があったなか、ビルが古くなったこと、そして知識集約型社会の方向性に人々のマインドを変えていかなければいけないという考えが高まったことが、改装プロジェクトへとつながっています」(下山田氏)
これに対し、新オフィスはレイアウトを一新。フロアの対角線を結ぶように通路を設け、さらに、この通路を囲むようにワークスペースやミーティングルームを配置した。
このようなレイアウトを採用することにより、通路の両端にある階段やエレベーターへのアクセスがスムーズになり、それによって同フロア内だけでなく、フロア間の縦方向のコミュニケーションも促進するのが、このレイアウトのねらいだ。
同社はこのレイアウトを、グリッドデザインに対してエッジデザインと呼んでいる。エッジデザインはグリッドデザインと比較して、スペースの使用効率が低いように思えるが、実際に使用する有効面積を計算すると、グリッドデザインと大きな差はない。オフィスフロアは全て、このエッジデザインを採用している。
エッジデザインの採用は、フリーアドレス制を想定したものであることも強調しておきたい。ボッシュは改装を機にフリーアドレス制を導入。社員はロッカーから自分のPCを取り出し、空いている場所に座って仕事をしている。
このとき用いるアプリ「SpaceBosch」は、ボッシュのオリジナルアプリだ。個々のデスクの利用状況を確認できるほか、誰が社内のどこにいるのかといったことも検索して確認できる。
会議室やミーティングルームはもちろん、社長室、役員室など、ほとんど全ての部屋はガラス張りにした。社長室、役員室はカギをかけておらず、本人がいないときに会議室として使用することもある。
「会社のなかで本当に金庫にしまわなければいけない情報は一割もありません。情報の透明性を高め、その透明性の高い情報を使って新しい価値をつくっていきたいと考えています」(下山田氏)
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