「ジョブ型」雇用に恐れる必要はあるのか 「賃金」が上がるかもしれない理由:“いま”が分かるビジネス塾(2/3 ページ)
コロナ危機をきっかけに、日本型雇用の見直しが進もうとしている。終身雇用が保障されて、会社の中は「管理職だらけ」といったケースが多いかもしれないが、ジョブ型雇用になればどのような働き方が増えるのか。不安を感じるかもしれないが……。
日本の雇用だけが特殊な形態に
日本の雇用制度は「メンバーシップ型」であり、今後は「ジョブ型」にシフトするなどと説明されているが、実はメンバーシップ型などという型は存在しない。日本以外の主要国は、すべて業務に対して賃金を支払う制度であり、構成員であることに給料を払っているのは日本だけである。
かつては、こうした日本の特殊な雇用環境について「日本型雇用」などと説明していたが、最近では「メンバーシップ型」などと、あたかもいくつかの型があるかように説明する専門家が増えてきた。おそらくだが日本の雇用は特殊だと指摘すると、自称「愛国者」から執拗(しつよう)な誹謗(ひぼう)中傷を受けるので、こうした人たちに忖度(そんたく)し、曖昧な説明をするようになったものと推察される。
結局のところ、業務に対して賃金を支払うのが当たり前であり、日本もかつては諸外国と同様、業務に対して賃金が支払われていた。そして業務に対して賃金を支払う制度のほうが労働者にとっては公平であり、満足度も高い。
所属に対して賃金を支払ってしまうと、定年退職するまで、組織に対する絶対的な忠誠が求められる。転職市場も整備されないので、ひとたび失業すれば行き場を失う。結果として、会社からの無理難題を唯々諾々と受け入れたり、無制限の長時間残業が横行したりする。業務ではなく組織に対する忠誠に賃金が払われていることを考えれば、日本企業が総じてブラックな体制になるのも当然といってよいだろう。
賃金が業務に対して支払われると、労働者と企業の力関係が変わる。業務が終わればそれでおしまいで、それ以上の要求を行うことはできないし、何より労働者側にそれを受け入れるメリットがない。無理難題を受け入れる労働者が少なければ、結果としてブラックな職場は減っていく。
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