真面目に運営していても、「飲食店」だけが叩かれるシンプルな理由:スピン経済の歩き方(5/6 ページ)
4度目の緊急事態宣言が発出され、飲食店がまた攻撃されている。西村康稔経済再生相からは、まるで「反社」扱いされたわけだが、なぜ飲食店はここまで叩かれるのか。背景にあるのは……。
良かれと思ってやったこと
このような話を聞くと、「こいつは政府をどこまで悪者にすれば気が済むのだ」と怒りでワナワナと震える方も多いかもしれないが、筆者は政治家に対して、「選挙のために飲食店をいじめる人でなし!」などと批判をするつもりは毛頭ない。彼らも彼らなりに「日本のため」と考えている。むしろ、「日本のため」という考えが強すぎるため、視野を狭めて、無意識に弱者イジメをしてしまっているのだ。
要するに、西村大臣が無邪気に飲食店を反社扱いしたのとまったく同じで、飲食店をイジメる気などサラサラなく、「これが日本のため」という感じで、良かれと思ってやったことが、結果として「飲食店イジメ」につながっているのだ。
この無意識に弱者を犠牲にすることを、日本の為政者はよくやってしまう。代表が、沖縄戦だ。よく大本営の人間たちは、沖縄の人々を「捨て石」にしたと言われるが、当時のエリートたちはそんな悪魔のような発想をしていたわけではない。
国体を維持するためには、本土決戦までの時間をできる限り稼いで、米国の戦力を少しでも奪っていなければいけない。この目的を達成することがすべてなので、沖縄の日本軍は即時撤退も降伏も許されなかった。だから、追いつめられると、南部へと逃れて沖縄の住民を盾にするようにして徹底抗戦した。軍隊として最低の振る舞いだが、「日本を守るため」という崇高な目的のためにはしょうがないと考えられた。
つまり、沖縄を犠牲にしようとしたのではなく、「日本のため」という目的で頭が一杯で、良かれと思ってやったことが、結果として「沖縄の人々の命を捨石にする」という、近代史上にまれに見る冷酷な人命軽視作戦となってしまったのだ。
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