電子帳簿保存法とe-文書法は、何が違うのか 成り立ちを整理する:いまさら聞けない電子帳簿保存法(2/3 ページ)
令和3年度の税制改正で、電子帳簿保存法が改正されました。これまでと比べると抜本的改革というべき内容です。今回は、電子帳簿保存法の成り立ちを説明します。いまさら聞けないお話です。
電子帳簿保存法の改正概要
2015年改正
(1)15年の改正で、それまでお金やモノの流れに直接関連する、請求書や領収書などのエビデンス(重要書類)の電子ファイルに必要とされていた、電子署名が不要になりました。
その代わり、それまでお金やモノの流れに直接的には関連しない、見積書などのエビデンス(一般書類)の電子ファイルにはタイムスタンプを付すことが義務付けられました。
(2)また、15年からエビデンスの電子保存を妨げる最大の原因といわれていた「3万円ルール」が撤廃されました。3万円ルールとは、「電子保存を認めるのは『3万円未満』のエビデンスだけで、3万円以上のエビデンスについては、紙で保存し続けなければならない」というルールです。これが15年に撤廃されました。
(3)エビデンスの電子保存をするための、税務署への申請手続きを透明化する目的で、以下の3項目の「適正事務処理要件」が明示されました。
(i)記録や承認に関する相互牽制(けんせい)機能
(ii)規定通りに手続きが行われていることをモニタリングする定期的検査
(iii)問題が発生した場合の再発防止の仕組み
この改正により、税務署にエビデンスの電子保存申請を行った件数は、累計ベースで、16年6月までに380件に、17年6月までに1050件になりました。しかし、日本には約400万社の企業があるといわれていますから、目的を達成するにはまだまだ足りません。
2016年改正
(1)原稿台のある複合機(コピー機にPDF機能などがある機器)やドキュメントスキャナーなどでのスキャンしか認められなかったものが、スマートフォンやデジタルカメラによるスキャン(撮影)も認められるようになりました。
(2)一方、エビデンスを入手した本人がスキャンする場合には、エビデンス一枚一枚に氏名を自署してからスキャンすることが要件として加わり、一部、緩和とは逆行する規定になりました。
この改正により、税務署にエビデンスの電子保存申請を行った件数は、累計ベースで、18年6月までに1846件に、19年6月までに2898件になりました。しかし目的達成には、まだまだ足りません。
2019年改正
(1)「過去分の重要書類」も電子保存して良いことになりました。それまでは、一般書類については、税務署に承認されれば、過去にさかのぼってスキャンして要件を満たせば紙のエビデンスを捨てられましたが、重要書類も過去分を捨てられるようになりました。
(2)エビデンスを入手した本人がスキャンする場合に付すタイムスタンプは「3日以内」という規定でしたが、「おおむね3営業日以内」となり、土日祝日を挟む場合の要件が緩和されました。
(3)定期的な検査の頻度が、「全ての事業所等を対象として1年に1回以上」という規定でしたが、「おおむね5年のうちに全ての事業所等の検査を行えばよい」、つまりローテーションベースでの実施で良いということになりました。
(4)「請求書や領収書など書類の種類別に検索できる」ことが求められていましたが、「勘定科目別に検索ができれば良い」という要件に緩和されました。
この改正により、税務署にエビデンスの電子保存申請を行った件数は、累計ベースで20年6月までに4041件になりました。まだまだ足りません。
2020年改正
コーポレートカードなどによるキャッシュレス決済の場合には、領収書の発行自体が不要になりました。カード会社から報告されるデジタルデータの利用明細を、紙の領収書の代わりにできるようになりました。会食後に、コーポレートカードで決済すれば、飲食店で領収書をもらわなくて済むようになりました
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