電子帳簿保存法とe-文書法は、何が違うのか 成り立ちを整理する:いまさら聞けない電子帳簿保存法(3/3 ページ)
令和3年度の税制改正で、電子帳簿保存法が改正されました。これまでと比べると抜本的改革というべき内容です。今回は、電子帳簿保存法の成り立ちを説明します。いまさら聞けないお話です。
2021年改正(22年1月1日から施行)
(1)税務署への承認がいらなくなります。
これまではエビデンスの原本を紙ではなく電子データにするためには、税務署に申請して承認を受ける必要がありました。これが、電子保存にしたければいつからでもできるようになったのです。
これはエビデンスに限らず、帳簿も同様です。
(2)これまでは、最短の場合、エビデンスを入手した日から「おおむね3営業日以内」にスキャンしてタイムスタンプを付す必要がありました。これが、エビデンス受領の翌日から2カ月以内のスキャンで良いことになったのです。日程的にずいぶん余裕が認められるようになりました。
(3)エビデンスを入手した本人がスキャンする場合には、エビデンス一枚一枚に自署してからスキャンすることが要件でした。これが、受領者本人の自署がいらなくなったのです。実務的には、大幅な工数削減といえるでしょう。
(4)訂正・削除が確認できるシステムや訂正・削除ができないシステムに保存する場合は、タイムスタンプがいらないことになりました。経費精算システムや財務会計システムなど、エビデンスをPDFファイルにして保存できる機能があって、そのPDFファイルの訂正・削除ができないシステムであれば、タイムスタンプはいらないのです。あるいは、訂正・削除ができてもそのログが確認できるシステムでも同様です。
(5)相互牽制も必要なくなりました。
(6)定期検査も必要なくなりました。
「もう面倒なことは何もいらない」といっても過言ではありません。21年の改正は、まさに画期的といえます。ただ、留意すべき点があります。
(後編)「『うちは関係ない』とは言えない、2つの注意点」に続きます。
著者紹介:中田清穂(なかたせいほ)
株式会社Dirbato(ディルバート)公認会計士
青山監査法人、プライスウォーターハウスコンサルタント株式会社を経て、株式会社ディーバを設立。連結経営システムDivaSystemを開発し事業を展開。導入実績400社を超えた、上場1年前に後進に譲り独立。
財務経理の現場と経営との関連にこだわり、課題を探求し、解決策を提示し続ける。財務経理向けにサービスを提供する業者へのコンサルティングも実施。
現在、株式会社Dirbato(ディルバート)で財務経理DX事業責任者として活動中。
https://www.dirbato.co.jp/information/20210701/
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