「ペーパーレス年末調整」が、従業員に選ばれる“会社の条件”になる?:リモートワークを止めないSaaS(1/2 ページ)
ペーパーレス年末調整を導入しているかどうかが、従業員から選ばれる会社になる条件の一つになりそうだ。
連載:リモートワークを止めないSaaS
筆者は3年以上前からリモートワークを実践。現在、経営している会社でも全従業員がリモートワークで働いていて、業務を滞りなく進めるためにさまざまなITツールを活用している。本連載では、リモートワーク下において生じる課題に対して、ITツールを活用して対応するための方法を具体的に解説したい。
2020年の年末調整、読者の皆さんは、紙の書類で会社に提出しただろうか。それともスマートフォンやパソコンからの入力で完結しただろうか。ペーパーレス年末調整を導入しているかどうかが、従業員から選ばれる会社になる条件の一つになりそうだ。
電子申請が義務付けられた年末調整
年末調整は、1年分の徴収すべき所得税を再計算し、毎月の給料で既に徴収した額との差額を調整する仕組みである。毎月の給与明細では「所得税」の欄で一定額が控除(源泉徴収)されているが、これは給与額から算出された概算金額であるため、1年間の所得金額を集計した上で正式な年間所得税額を計算する必要がある。
また、毎月の給与計算上は考慮されていない各種控除(生命保険料、地震保険料、住宅ローン、小規模企業共済等掛金)の金額を取り込むことと、配偶者や扶養親族などの状況変化などの反映漏れがあった場合の再計算についても、年末調整を行うことで、適切な所得税額になるように調整される。
実は20年度からこの年末調整に関する電子申請の義務化要件が厳しくなっている。年末調整の結果として作成した源泉徴収票などの法定調書は、会社から全従業員分を税務署や各自治体に提出する必要があるが、19年度までは「1000枚以上」の場合は電子データでの提出が義務付けられていたが、20年度からはこの要件が「100枚以上」まで一気に引き下げられたのだ。
税務署や自治体側も紙で提出された大量の書類を処理するには膨大な手間がかかるが、それが電子データになっていればエラーチェックや集計も容易に処理できる。この電子化要請の流れの中で広まってきたのが、ペーパーレス年末調整と呼ばれるスマホやパソコン上から行える年末調整の手続きだ。
ペーパーレス年末調整
年末調整は労務業務の一大イベントであるため、例年10月ごろから労務管理SaaSの広告活動が活発化する。ここ数年はSmartHRとオフィスステーションがペーパーレスを前面に出したテレビCMを行っているため、ご覧になった方も多いだろう。
年末調整の際に記入する書類は年々複雑化している。20年度には、所得金額調整控除という新しい概念も登場した。記入欄も小さく言葉も難しい上に、そもそも何を書けばいいのか分からないなど、多くの従業員にとってはなかなか取り掛かる気になれない書類だろう。
企業の労務担当者にとっても、年度末に全従業員の書類を回収、チェックし、集計をしなければいけない年末調整の手続きは、非常に煩雑だ。これを解決するために考え出された機能が「ペーパーレス年末調整」だ。
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