GDPはマイナスなのに、税収プラスの摩訶不思議 経済はもはや内需ではない悲しさ:何が起きているのか(1/3 ページ)
財務省の発表によれば、2020年度の税収実績は60.8兆円。過去最高となり、前年比4.1%の増加だったというのだ。コロナ禍で経済が大打撃を受ける中で、税収が伸びることが不思議としか言いようがないのだが、いったい何が起きているのか。
著者プロフィール:猪口真(いのぐち・まこと)
株式会社パトス代表取締役。
2020年春から続く新型コロナの猛威はオリンピックを迎えても、治まるどころかさらに増加傾向にあるのだが、なんといっても驚いたのが、20年度の税収の発表だった。
財務省からの発表によれば、20年度の税収実績は60.8兆円。過去最高となり、前年比4.1%の増加だったというのだ。つまり企業の利益は大幅に増加したのだ。
コロナ禍で経済が大打撃を受ける中で、税収が伸びることが不思議としか言いようがないのだが、いったい何が起きているのか。この税収増をみると、日本経済、本当は好調なのではないかと判断してもおかしくないのだが、1年前のコロナ禍の始まりの頃は、「リーマンショック以上の大不況になる」という専門家もいた。それが、特別定額給付金など、巨大な財政出動の要因にもなった。
この結果には、愕然とした人も多かったのではないか。街から人が消え、自分たちの商売の先行きも見えず、明らかに沈滞ムードが漂っているにもかかわらず、税収がなんと4%も増えたというのだから。
財務省の四半期ごとの数字を見ると、とくかく20年度の第4四半期の伸びがすさまじい。製造業の平成3年1~3月期は、なんと、前年同期比63.2%の超大幅アプだ。おそらく中国、アメリカ向けの輸出の好調だと思われるが、ありえないほどの伸びとなり、国の予想をはるかに上回る結果となった。少し前の財務省の税収見通しは、8兆円と19年度に対して大きく落ち込むことを予想していた。
それでも、売り上げと利益のアンバランス感はぬぐえない。20年度の名目GDPは536.3兆円と前年比3.9%減で、かなりの落ち込みにもかかわらず、収益は上がったのだ。
税収の増加分は消費税のアップによるとも言われている。20年度の消費税収は21兆円、19年度からの上昇分が2.6兆円あったことを考えれば、税収全体の増加額がだいたい合う計算になる。ということは、企業所得税収はほぼ変わらなかったということになる。
関連記事
- 定期代が上がる!? 鉄道の“変動運賃制度”が検討開始、利用者負担は
鉄道で「変動運賃制度」の検討が開始された。そもそも、通勤通学定期券によるボリュームディスカウントは必要だったのか。鉄道会社の費用と収益のバランスが、コロナ禍による乗客減少で崩れてしまったいま、改めて考えてみたい。 - “雑草バブル”の熱狂 200万円超の落札事例も
今「雑草バブル」がピークを迎えている。ネットオークション最大手のヤフオクでは、これら観葉植物を中心とした高額取引事例が増加している。10万円を超える価格で落札されたものはここ半年で数百件にも上っており、数十万円での取引も珍しくなくなりつつある。 - 売上が9年で20倍に! 本物そっくりのカプセルトイが売れている背景に、2つのキーワード
カプセルトイが人気を集めている。市場規模は400億円に達しているようだが、筆者が気になっている会社がある。「まるで本物!」と感じられるほど、精密な商品ばかりを手掛ける「ケンエレファント」だ。担当者に開発の裏側を聞いたところ……。 - 殻を捨てた「ザク」が、20万個以上売れている秘密
バンダイが発売しているガシャポン「ザク」が売れている。機動戦士ガンダムシリーズに登場するザクの頭部を再現したものだが、最大の特徴はサイズ。カプセルよりも大きいこのアイテムはどのように開発したのか。担当者に聞いた。
関連リンク
Copyright (c) INSIGHT NOW! All Rights Reserved.