「インフレ」になると、どうなるのか? 残念ながら:“いま”が分かるビジネス塾(1/3 ページ)
米国の景気が回復基調にあることから、このところ「インフレ」という言葉をよく耳にするようになった。もし日本でもインフレが進んだ場合、国民の生活はどうなるのか。筆者の加谷氏が解説したところ……。
このところ「インフレ」という言葉を見聞きするケースが増えてきた。コロナ危機からの急回復に伴い、米国でインフレ懸念が生じていることが原因だが、日本では長くデフレが続いてきたことから、若い世代を中心にインフレを知らない人が多くなっている。米国のインフレが日本に波及するのかはまだ分からないが、仮に日本でもインフレが進んだ場合、国民の生活はどうなるのだろうか。
悪いインフレが存在する
インフレというのは継続的に物価が上昇している状態のことを指す。簡単に言えば、今年100円だった商品が翌年には105円になり、その翌年には110円になるといった状況をイメージすればよい。インフレという単語は、あくまで物価が上がる現象を示しているだけなので、それ以上の深い意味はない。
そうであるならば、インフレはインフレであり、「良いインフレ」や「悪いインフレ」など存在しないはずだが、現実はそうでもない。インフレが発生する理由次第では、大衆の生活はかなり苦しくなるので、「悪いインフレ」もあり得る。
インフレが発生する原因は、大きく分けて2つある。1つは景気が順調に拡大し、それに伴って物価が上がるものである。景気が拡大すると商品がよく売れるので、値段を上げても販売数量が落ちなくなる。販売数量が落ちなければ価格を上げたほうが利益を最大化できるので、多くの企業が値上げを決断し、世の中全体の物価も上昇に転じる。
この場合、景気の拡大が原因なので企業の業績も上向いていく。多少のタイムラグはあるが、企業は人材を確保するため賃上げを行うので労働者の収入も増える。したがって物価が多少上がっても、国民生活が苦しくなるわけではない。高度成長期の日本はまさにこうした状況であり、物価も上がったが、そのぶんだけ年収も増えていたので、多くの人が経済に満足していた。
一方、景気が横ばいだったり、逆に悪化しているときであっても物価が上昇するケースがある。海外から輸入する商品の価格が急上昇したり、中央銀行が紙幣を発行し過ぎたりすると、景気とは無関係に物価が上昇する。この場合、景気が良くなっているわけではないので賃金はあまり上昇せず、物価だけが上がるため国民生活は苦しくなる。
これまで日本ではデフレが続いていると説明されてきたが、これは状況をイメージしやすいようにそう表現していただけで、実態からはややかけ離れている。日本の物価は、大きくは上がっていないものの、毎年、少しずつ上昇を続けてきた。景気が良くない状態であるにもかかわらず、物価が上がっているのは、海外物価の影響を受けているからである。
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