日本という組織、「無責任なトップ」のツケは誰に?:河合薫の「社会を蝕む“ジジイの壁”」(3/4 ページ)
東京五輪が始まる。しかし、最初から開催直前まで問題だらけ。誰が責任者かも分からないような事態が続いている。日本という組織の問題点とは。そして、「無責任なトップ」のツケは誰に回ってくるのか──?
そして、事態が難しい案件であればあるほどリーダーには「優れた決断」が求められるわけですが、そこには、「準備、判断、実行」という3つのフェーズからなる意思決定のプロセスが存在します。
第1フェーズの「準備」とは、解決しなければならない問題を見極め、「その問題を解決するための判断が、なぜ必要なのか?」をチームのメンバー全員に理解させる段階です。リーダーは「目指すべきゴール」を明確にし、メンバーと共有する。
もし、メンバーに理解を求める過程で反対意見が相次いだら、「問題の本質」をリーダーが見落としている可能性があるので、いったん立ち止まり、「今、何をすべきか? 何が求められているのか?」を周りの意見や置かれている状況、取り巻く環境から包括的、かつ具体的に再考する必要があります。
そして、メンバーへの理解が徹底されたところで、第2のフェーズの「判断」を下すわけですが、ここでの判断は明快で、具体性のある中身を伴っていなくてはなりません。
最後のフェーズ、「実行」では絶えずフィードバックと検証とができる環境を整え、問題があれば軌道修正を行います。特に今回のような未曾有の事態では、最優先事項が時間とともに変わる可能性もあり、適切な軌道修正が要求されるので、迅速かつ柔軟に対応する姿勢がリーダーに求められます。
こういった一連のプロセスが、腑に落ちる流れで行われたとき、初めてリーダーシップを発揮したと評価されるのです。
しかしながら、残念なことにコロナ対策は最初から「お願いベース」ばかりで、「問題を解決するための判断」の具体策がないまま1年以上が経過しました。
新型コロナウイルスという「感染症」が問題なのですから、コロナ対策のナンバー2は、どこからどう考えても「厚労大臣」のポジションです。
例え経済対策を同時並行で進めるにしても、「大本の原因」は変わりません。なのに、厚労大臣との関係性があいまいなまま、20年3月に西村氏が「新型コロナウイルス感染症対策担当大臣」に就任。21年1月には河野氏が、「新型コロナウイルスワクチン接種担当大臣」に任命されました。
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