日本という組織、「無責任なトップ」のツケは誰に?:河合薫の「社会を蝕む“ジジイの壁”」(4/4 ページ)
東京五輪が始まる。しかし、最初から開催直前まで問題だらけ。誰が責任者かも分からないような事態が続いている。日本という組織の問題点とは。そして、「無責任なトップ」のツケは誰に回ってくるのか──?
いずれの大臣発令も、官報に掲載されておらず、この人事は辞令を用いたものではなく口頭での指示によるものでした。
「大臣の仕事は首相から口頭で指示を受けるものもあり、紙に書かれた形でなくても、仕事の重みとして差があるわけではない」(内閣官房の担当者)とのことですが、「口頭で指示を受ける」場合、組織全体でのポジションはいったいどうなっているのか。「口頭で指示を受ける」際に、厚労大臣はどうかかわっているのか。
どれもこれも分からないことだらけです。
もし、第1フェーズの「準備」が徹底的に行われた結果として、2人の大臣が任命されたのなら、問題ないでしょう。
しかし、繰り返しになりますが、準備らしき準備はないまま、問題解決ではなく、問題の火消しのために「圧力」をかけている。「酒類」を扱う関係者たちが圧力をかけられ、「ワクチン」接種を進める自治体の首長たちが圧力をかけられ、「いい結果」がでれば、「ほら、俺ってすごいだろ!」とドヤ顔され、問題がおこれば「現場の責任」にされ続けています。
船頭多くして山に登る、下手の大連れ、役人多くして事絶えず……とでもいうのでしょうか。
誰が責任者か分からないから、説明責任も果たされない。誰が先頭に立って意思決定するかが明確でないから、結果責任を誰も取らない。その結果、現場が翻弄され、無駄な金が注ぎ込まれ、現場の努力が台無しになる一方で、権力に寄り添う“お仲間”ばかりが守られる事態が続いている。
「人の命か経済か」と散々いわれ、「安心安全」という精神論ばかりが繰り返されているけど、彼らの関心ごとは命でもなければ経済でもない。安心したいのは「選挙がある政治家」であり、安全は「一つよろしく!」と国民の自粛に委ねられています。
リーダーがいない。仕事をしてる“リーダー”が全く見えてきません。
いつの時代も、どんな組織のいかなる案件でも、「無責任なトップ」のツケは、末端の現場が払わされるという不条理が存在するというリアルを分かってほしいてす。
河合薫氏のプロフィール:
東京大学大学院医学系研究科博士課程修了。千葉大学教育学部を卒業後、全日本空輸に入社。気象予報士としてテレビ朝日系「ニュースステーション」などに出演。その後、東京大学大学院医学系研究科に進学し、現在に至る。
研究テーマは「人の働き方は環境がつくる」。フィールドワークとして600人超のビジネスマンをインタビュー。著書に『他人をバカにしたがる男たち』(日経プレミアシリーズ)など。近著は『残念な職場 53の研究が明かすヤバい真実』(PHP新書)、『面倒くさい女たち』(中公新書ラクレ)、『他人の足を引っぱる男たち』(日経プレミアシリーズ)、『定年後からの孤独入門』(SB新書)、『コロナショックと昭和おじさん社会』(日経プレミアシリーズ)がある。
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