止まらないウナギロンダリング 漁業者搾取の謎ルールに支えられる「黒いウナギ」に未来はあるか: 「土用の丑の日」に憂う(2/6 ページ)
今年もウナギ業界最大のイベント「土用の丑の日」がやってきた――。
養殖めぐる黒い「ウナギロンダリング」
国内の採捕量では日本のウナギ養殖池を満たすことはできないため、多くの稚ウナギが輸入されている。問題なのは、その輸入先だ。20年7月から21年5月までに日本に輸入された稚ウナギ9570キロのうち、約3分の2を占める6120キロは香港からのものである。
しかし、札幌市と同じくらいの面積しかない香港に稚ウナギの遡上するような川はない。香港から稚ウナギの輸入が急増したのは07年になってからだが、この年はそれまで最大の輸入元だった台湾が輸出を原則として禁止した年だ。以来、稚ウナギはいったん香港に密輸され、香港から日本に合法的なかたちで再輸出されるという、黒い「ウナギロンダリング」が行われている。
この1年で言うと、輸入された稚ウナギ由来の国産養殖ウナギのうち3分の2は、こうした「ウナギロンダリング」の可能性の高い香港からのものなのだ。
密漁と無報告のまん延 反社会勢力も介在
では国産の稚ウナギならば全て「白い」のか。答えは残念ながらノーである。水産庁によると、20年の稚ウナギの採捕量は17.1トンであったところ、採捕された報告量は10.8トンにすぎないとされており、残りの6.3トンは密漁あるいは無報告のものであると考えられるからだ。
4割近くの国内採捕の稚ウナギも、「黒いウナギ」であることになる。あわせて考えると、ここ10年間の国内の養殖池に池入れされる稚ウナギのうち「黒いウナギ」である可能性の高いものは、44〜84%を占めていることになる(図3)。高値である稚ウナギの密漁や闇取引には一部で反社会勢力の介在も招いている。現在ウナギの採捕は各都府県が制定する漁業調整規則などにより規制されており、漁業法に定める当該規則の罰則上限は6月以下の懲役若しくは10万円以下の罰金にすぎず、実刑判決は極めてまれだ。
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