止まらないウナギロンダリング 漁業者搾取の謎ルールに支えられる「黒いウナギ」に未来はあるか: 「土用の丑の日」に憂う(3/6 ページ)
今年もウナギ業界最大のイベント「土用の丑の日」がやってきた――。
無報告取引と搾取を生む「謎ルール」
こうした密漁に対して、国も対策に乗り出している。昨年12月に施行された改正漁業法では罰則の引き上げが行われており、農林水産省令で「特定水産動植物」に指定された水産物を密漁した場合、3年以下の懲役または3000万円以下の罰金に処すこととなった。稚ウナギもこの「特定水産動植物」に指定され、23年12月よりこの罰則強化が実施されることになっている。
一見密漁対策への手当てができたかに見える一方、ここに大きな穴が存在する。一部の自治体に存在する無報告取引と搾取を生む「謎ルール」だ。
稚ウナギは都府県の定める漁業調整規則などにより規制され、原則として採捕が禁止されている。例外的に都府県から許可を受けた場合にのみ採捕が可能だ。
ここで問題となるのが、一部の自治体に存在する稚ウナギの販売と流通への複雑かつ不合理な規制である。高知県を例に考えてみよう。
高知県の稚ウナギ流通(海部健三中央大学法学部教授作成スライド「国内シラスウナギの違法漁獲と流通の現状」、2021年7月、8頁より )。実際の流通では現場責任者、許可名義人を通さない場合など、本図とは異なる経路が存在する。売買金額は聞き取り調査に基づいている(図の引用に当たり海部健三教授より予め許諾を頂きました。海部先生に御礼申し上げます)
高知県では県の漁業調整規則に基づき、「許可名義人」が採捕の許可を受ける。だが、この「許可名義人」とは別に、稚ウナギを実際に捕っている「採捕従事者」が存在している。さらに、高知県には「うなぎ稚魚(しらすうなぎ)特別採捕取扱方針」という県が定めたルールがあり、採捕従事者は稚ウナギを捕った場合、指定集荷人を通じて必ずその全てを許可名義人に出荷しなければならない(令和2年度うなぎ稚魚(しらすうなぎ)特別採捕取扱方針(内水面・海面)第12条1(3)および(4)) 。
こうして買い取った稚ウナギを、許可名義人は漁業者と養鰻業者により構成される「高知県しらすうなぎ流通センター」に出荷することが義務付けられている(同方針第12条1(4)) 。そして「高知県しらすうなぎ流通センター」は、稚ウナギを原則として県内の養鰻業者の種苗として供給しなければならない(同方針第12条2) 。
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