「銀行は土管でいい」GMOあおぞらネット銀行が目指す、組込型金融のあり方(1/3 ページ)
「組込型金融サービス」の話題が盛り上がりつつある。これはいったいどのようなものか。銀行APIの利用促進を進めるGMOあおぞらネット銀行の事例から、それを探り、さらに組込型金融が普及したときの銀行の姿についても考察する。
昨今、「組込型金融サービス」の話題が盛り上がりつつある。これまで銀行のサービスは銀行が提供するものだった。しかし銀行がサービスを部品化して他社に提供し、サービスに「組み込む」ことで、銀行は裏側に入り、統合されたユーザー体験を目指すのが組込型金融だ。
エンベデッドファイナンス、プラグイン金融などさまざまな呼び方があるが、基本的に同じことを指す。組込型金融を活用することで、例えばECサイト運営者が融資サービスを提供したり、旅行サイト運営者がキャンセル保険サービスを提供したりといったことが、一環したUIUXの中で実現できるようになる。
この組込型金融の提供に戦略的に取り組むのが、GMOあおぞらネット銀行だ。
組込型金融を技術的な側面から見ると、インターネットを介して銀行システムにアクセスできるAPIを活用する。この銀行APIは、金融庁の旗振りの下で各銀行が導入を進めてきたが、一部では高額な利用料を課す銀行もあるなど、活用に向けた温度感はまちまちだ。GMOあおぞらでは、基本的なAPIを無料で公開するほか、テスト環境も無償で提供するなど、APIの利用促進に力を入れている。
「銀行などの金融関連サービスは、間に入出金が存在しているので、これまでユーザー体験が分離されているのが当たり前だった」と、GMOあおぞらでAPIを担当する岩田充弘氏は話す。
例えば、決済サービスへのチャージなどでリアルタイム口座振替の仕組みを使うと、途中から銀行のネットバンキングへのログインを求められることがある。ユーザーにとってはチャージをしたいだけなのに突然銀行が現れる。こうした体験の不連続もAPIの利用によってなくなると見る。
「銀行の機能やサービスは、顧客接点を持っている事業者のサービスの中に溶け込んでいくものであるべき。(裏側の銀行に)気づかないように決済ができ、商品を買うときにに後払いボタンがある、サービスを受けるときに保険ボタンがある、というように、できるだけ銀行を意識させずにサービスがあるべきだ」(岩田氏)
2021年6月時点で137社が同社の銀行APIを利用している。うち、3割が資本金1000万円未満、7割が従業員50人以下となっており、銀行機能を自社サービスに組み込みたいというスタートアップ企業の利用も多い。
137社のうち、銀行口座情報を取得して自動で家計簿を付ける、いわゆる電子決済等代行業の利用は12社程度に限られる。そのほかは、決済の仕組みとしてAPIを自社サービスに組み込むところが多く、32%にのぼる。では、どんなサービスでAPIが活用されているのだろうか。
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