「銀行は土管でいい」GMOあおぞらネット銀行が目指す、組込型金融のあり方(2/3 ページ)
「組込型金融サービス」の話題が盛り上がりつつある。これはいったいどのようなものか。銀行APIの利用促進を進めるGMOあおぞらネット銀行の事例から、それを探り、さらに組込型金融が普及したときの銀行の姿についても考察する。
自社口座の確認と振り込みをAPIで自動化
例えば、JTBが20年に始めたふるさと納税サイト「ふるさとコネクト」では、GMOあおぞらのAPIを使って、処理の高速化と自動化を実現した。ユーザーが銀行振り込みを使ってふるさと納税を行う場合、申し込みがあったら請求書を送り、請求書に基づいて事業者の口座に振り込みを行う。事業者は入金確認後、それを各自治体に振り込むという作業を行う。
通常のネットバンキングサービスを利用した場合、入金の確認も手間がかかり、次に自治体ごとに振り込みのリストを作ってアップロードし、バッチ処理するといった流れになる。
ところがAPIを利用することで、これがすべてシステム化できる。寄付があるたびにAPIを使って振込専用口座を作成。口座に入金があったら、JTB側のシステムに通知が送られ、照会や消込を行い、この入金完了をトリガーに、今度は各自治体にAPIで自動的に振り込みが行われる。
こうした仕組みはクレジットカードでは従来からあったが、銀行振り込みを使った場合、APIを活用することで初めて実現できた。
人材派遣会社キャリアの給与払いの自動化も、API活用の好例だ。同社では5000人近い派遣スタッフに対して、週払いや日払いを行っているため、毎月1万回以上の給与振り込みが発生していた。これを銀行APIを使い、自動化を実現した。
スタッフはパソコンやスマートフォンから自分の給与残高を確認し、送金依頼ボタンを押す。すると、システム側で給与残高の照会とAPIを使った振り込みが実行され、翌日にはスタッフの口座に給与が振り込まれるというものだ。
これまでは、スタッフからFAXで受け取った勤務情報をもとに、支払担当者がネットバンキングにログインして、スタッフの振込先口座を指定して支払い金額を手作業で入力していたのだという。金額の間違いを防ぐため、上長による二重チェックも必須だったが、これらの負担がすべてなくなった。
2つに共通するのは、企業が自社口座に対してAPIによるアクセスを行うという点だ。銀行APIが生まれた背景の1つには、預金者に代わって銀行口座にアクセスを行う電子決済等代行業者が、スクレイピングの代わりに安全なAPIを使えるようにするという狙いがあった。しかし、企業が自社口座にAPIでアクセスできるだけでも、さまざまな不便が解消される。
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