3年連続でトップ! サントリーの「天然水」は、なぜJANコードを変えたのか:週末に「へえ」な話(3/4 ページ)
2020年11月、サントリーの「天然水」に異変が起きたことをご存じだろか。新たな商品「北アルプス」を展開したタイミングで、商品のJANコードも統一したのだ。通常、1つの商品にJANコードは1つなのに、なぜ統一したのか。その背景を聞いたところ……。
JANコードがネックに
冒頭でも申し上げたが、ミネラルウオーター市場は拡大している。多くの人にとって「水は買うもの」として定着し、日常行為の一つになっている。スーパーやコンビニの棚には当たり前のように、さまざまなブランドが並んでいるわけだが、自然災害が起きたときにはどのような状況に陥るのだろうか。
天然水の数字(出荷)をみると、顕著である。東日本大震災のとき、前年の発生月と比べ146%も出荷していたのだ。熊本地震のときは同130%、大阪北部地震のときは同118%、19年の大型台風19号のときは同114%――。
このような数字を目にした、同社の担当部署は「自然災害時でも天然水を安定的に供給しなければいけない」と思ったそうだが、ネックになっていたことがあったのだ。勘のスルドイ読者であれば、もうお分かりだろう。JANコードである。
以前の天然水は、他の商品と同様に商品ごとにJANコードがあった。また、エリアに応じて、商品を展開している(これはいまも同じ)。南アルプスは東日本、奥大山は近畿、中国、四国、阿蘇は九州といった具合である。
エリアによって店頭に並んでいる商品が違うので、例えば、岐阜県では南アルプスを販売しているのに、お隣の滋賀県では奥大山といった感じである。ということは、岐阜のスーパーでは基本的に南アルプスのJANコードを登録しているので、滋賀や京都の店頭で並んでいる奥大山を注文することができないのだ。
「えっ、そうなの? 奥大山の商品を販売したいなあと思えば、奥大山のJANコードを使えばすぐに発注できるのでは」と思われたかもしれない。しかし、話はそれほど単純ではない。筆者も「ちょっと入力すれば終わりでしょ」と思っていたが、その商品をどこの卸で購入すればいいのかなど、やらなければいけないことがたくさんあるそうなのだ。店の規模によっても違うが、JANコードを変えて新たな商品を注文するのに、7日〜10日ほどかかると言われている。
自然災害が起きたとき、水はすぐにでも手にほしい。できれば、全国から集めたい。いや、少なくとも近隣から手に入れることはできないのか。と思っていても、前述したような仕組みによって、発注してから店頭に並ぶまでどうしても時間がかかってしまうのだ。
同社が調査を行ったところ、「ミネラルウオーターは生活必需品だと思う(ややを含む)」と答えたのは57.6%と半数を超えた。そして、天然水は売れている。こうした背景を考えて、ブランド開発部門の平岡雅文さんは「(天然水は)社会インフラの一つともいえる商品になりつつあります。何かが起きたときに、『商品がありません』はできるだけ避けなければいけないので、業界の常識では考えられないJANコード統一に踏み切りました」と話していた。
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