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オフィスを整理・縮小するとき、どんな経理処理が必要か?(3/3 ページ)

新型コロナウイルスの感染拡大に伴い、オフィスを整理・縮小する企業が増えています。オフィスを整理・縮小する際の会計処理や消費税の取り扱いについて確認します。

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リース物件の経理処理

 リースには「ファイナンスリース」と「オペレーティングリース」があります。

 ファイナンスリースは、リース会社が物件を購入し、借手にリースするものです。借手からするとリース会社に物件購入費用を立て替えてもらい分割で支払うイメージです。

 オペレーティングリースは、ファイナンスリース以外のリースの総称です。リース会社が保有している物件を借手にリースするので、レンタルのイメージです。

 ファイナンスリースには、「所有権移転ファイナンスリース」と「所有権移転外ファイナンスリース」があります。所有権移転ファイナンスリースの場合には、リース期間の終了時に物件が借手のものになりますが、所有権移転外ファイナンスリースの場合には、リース期間の終了時に物件を返還しなければなりません。継続利用するには再リースするか、買い取る必要があります。

 リース取引の大半は所有権移転外ファイナンスリースに該当します。ファイナンスリースの会計処理は、原則的には売買処理をしますが、所有権移転外ファイナンスリースでは、売買処理と賃貸借処理が認められており、多くの中小企業は賃貸借処理を採用しています。オペレーティングリースの会計処理も賃貸借処理をします。

 ファイナンスリースは原則として中途解約できません。仮に当事者双方が合意して解約する場合、残存リース料や違約金をリース会社に支払います。オペレーティングリースは理論上では中途解約可能ですが、実務上では中途解約時に残存リース料や違約金等の支払いが発生することがあります。

(1)所有権移転外ファイナンスリース取引の売買処理

 売買処理の場合は、リース取引開始時にリース資産とリース債務を計上し、この時点でリース料総額に対する消費税を認識します。リース料を支払う際は、リース債務の返済として取り扱うので消費税を認識しません。解約時に支払う残存リース料も同様に消費税を認識しません。残存リース料とは別に、損害賠償的な違約金がある場合は、違約金部分は不課税となります(図表7)。

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(2)所有権移転外ファイナンスリース取引の賃貸借処理

 賃貸借処理の場合、リース料の支払い時に消費税を認識します。また、リース料の支払い時には、解約時に支払う残存リース料部分の消費税は認識していないため、残存リース料を支払う際は消費税を認識します。なお、売買処理と同様、残存リース料とは別に損害賠償的な違約金がある場合、違約金部分は不課税です(図表8)。

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セールアンドリースバックの経理処理

 セールアンドリースバックは、自社で所有している資産を売却し、売却後に買主から賃借することで、資産を使用し続けることができる取引です。

 例えば、自社所有オフィスのケースであれば、オフィスの売却により資金調達ができ、リース料を支払うことによりオフィスを継続使用できます。買主は建物とリース料を受け取ります。セールアンドリースバックでオフィスの一部分のみリースをすれば、実質的にオフィスの減床になります。

 セールアンドリースバックは、オフィスのリース契約がファイナンスリースに該当するかオペレーティングリースに該当するかで取扱いが変わります。

 ファイナンスリースの場合、税務上は金融取引として取り扱います。オフィスを担保に資金調達をしたイメージです。そのため、オフィスの売却により固定資産はなくなりますが、通常のファイナンスリースと同様に、リース資産とリース債務を新たに計上します。特有のポイントは、オフィスの売却損益は売却時に認識せず、リース期間に渡って損益計上する点です。損益を繰り延べることにより、オフィスの売却ではなく、オフィスを担保に借入をしたという金融取引としての実態を会計に反映させます。

 オペレーティングリースの場合は、売却とリースを個別の取引として取り扱うため、通常の売り買い取引と賃貸借取引として処理します。物件の売却損益は売却時に認識し、リース料(家賃)は毎月の支払い時に経費計上します。

著者紹介:畠山 亮洋(はたけやま あきひろ)

畠山亮洋税理士事務所/税理士

(株)セルフオーディット代表取締役。主にベンチャー企業、スタートアップ企業のサポートを行う。特にシード・アーリーステージでの「経理の仕組みづくり」が得意。

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