日本の若者が留学せずに「内向きになっている」のは本当か:世界を読み解くニュース・サロン(2/5 ページ)
新型コロナによって留学生の数が減っている。海外渡航が難しいのでこれは仕方がないが、数年前から「いまの日本の若者は内向き志向なので、留学に興味がない」といった論調のニュースがある。これは本当のなのか。ちょっと調べたところ……。
日本人留学者数は増加傾向に
筆者も昨年だけで、留学の相談を2件も受けた。海外に興味のある人は少なくないと感じていたので、「内向き」という意見に違和感があった。それが数字でも明らかになっている。
筆者としては、特にこれからの日本を支えていく人たちには留学をオススメしている。大学生から相談を受けた際も、そう答えた。その理由は、そうしないと、日本は間違いなく世界に置いていかれることになるからだ。ビジネスの世界でいえば、これまで以上にグローバル化が進むことが予想されるので、グローバル意識をもった人たちが少なくなると、日本の将来にマイナスな影響を与える可能性がある。
日本人はいま、どれほど海外留学しているのか。文部科学省によると、短期留学や語学留学、海外インターンシップなど単位取得のない留学も含めた状況は、19年度で、10万7346人になる。この数は、前年度と比べて、7800人減少しており、6.8%減となる。
ただこの数字は、新型コロナの影響で渡航できなかったことが大きい。事実、それまでの推移を見ると、日本人留学者数は増加傾向にあった。09年の3万6302人から年々増加していて、18年には11万5146人になっている。
その一方で、こんな数字もある。単位取得のある大学や大学院など高等教育機関への留学者数だ。その数は減少している。大学や大学院などへの長期留学をする日本人は、18年が5万8720人。高等教育機関への留学は、04年の8万2945人をピークに減少している。
留学生というのは、学校で単位を取得する人たちだけではない。そう考えれば、この数字をもって、「留学生が減っている」「若者が内向きになっている」というのはいかがなものかと思う。単位を取らなくとも、国外での生活に興味や意義を感じて、留学しているのである。グローバルな視野を得るのに、単位は必要ないのではないか。旅行で数日または1〜2週間海外に滞在するのは違う。
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