日本の若者が留学せずに「内向きになっている」のは本当か:世界を読み解くニュース・サロン(3/5 ページ)
新型コロナによって留学生の数が減っている。海外渡航が難しいのでこれは仕方がないが、数年前から「いまの日本の若者は内向き志向なので、留学に興味がない」といった論調のニュースがある。これは本当のなのか。ちょっと調べたところ……。
クリティカルシンキングを学ぶ
筆者は、高等教育機関だけでなく、単位を取らないような留学であっても、どんどん国外に出ていくべきだと考えている。でないと、日本という島国の外で暮らす人々のことを理解も想像もできないだろう。そうしたグローバルな感覚がなければ、ニュースの理解度すら変わるからだ。
また、英語圏だけが留学先ではない。これまでは米国やカナダ、オーストラリアなどが多かったが、最近では、中国や韓国、台湾、タイ、フィリピンなどアジア圏への留学者数が増加している。一方、米国への留学者数は減少しているという。
留学は就職などにもメリットがある。海外の学生も留学経験は有利に働く場合が多いようで、アイオワ州立大学の世界言語・文化学部の学部長であるチャド・ガスタ教授は、米メディアへの寄稿でこう書いている。
「私が10年以上をかけて行ってきた研究によれば、留学経験のある学生は、そうでない人と比べて、物事を批評的に見ること(クリティカルシンキング)ができ、問題を解決する能力も優れ、起業家精神もあり、コミュニケーションのスキルもある。異なる意見などにも寛容で、理解力も高い。芸術や社会問題、世界の出来事にも深い理解を示す。自分自身と自分の生活についても深く洞察している。留学生は、企業トップの仕事に売り込みやすくもある」
ここで出てくるクリティカルシンキングというのは、米国の教育でよく聞く言葉である。物事を批判的に見るのは、アカデミックな世界の基本であり、企業で働く際にも大事なクオリティーであると言える。また、米国の大学のジャーナリズム学部で最初に学ぶことの一つが、このクリティカルシンキングだったりする。
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