日本の若者が留学せずに「内向きになっている」のは本当か:世界を読み解くニュース・サロン(5/5 ページ)
新型コロナによって留学生の数が減っている。海外渡航が難しいのでこれは仕方がないが、数年前から「いまの日本の若者は内向き志向なので、留学に興味がない」といった論調のニュースがある。これは本当のなのか。ちょっと調べたところ……。
コロナ禍が落ち着けば
筆者は無条件に「留学が素晴らしい」と言っているわけではない。留学費用は安くないし、言葉も文化も違う新しい環境で生活するのはストレスも大きい。留学したからといって、自動的に言葉が話せるようになるわけでもない。現地の大学などに通うとなると、授業についていくのも大変である。
留学経験がない人でも、日本を代表するような成功者もいるし、そもそも高等教育を受けていなくても、偉業を成し遂げた人も少なくない。
ただその一方で、失言が多い日本の政治家は、グローバル感覚が希薄な人が多いと感じる。また、会社の役員クラスでも、「それはちょっと……」と感じることを言うケースがある。そういった人たちは、世界の潮流をつかみ切れていないのではないだろうか。1年ほど留学して海外で暮らしてきたら、彼らの口からこれまでのような暴言はもう出てこないかもしれない。
「海外で学ぶことは価値がある」――。このようなことを言うと、古臭いと思われるかもしれないが、先進国を含め世界中の学生やビジネスパーソンが、国外に飛び出して学んでいる。
いったん、職を離れて留学するのもいい。コロナ禍が落ち着けば、日本人もどんどん留学を再開してみてはいかがだろうか。
筆者プロフィール:
山田敏弘
元MITフェロー、ジャーナリスト、ノンフィクション作家。講談社、ロイター通信社、ニューズウィーク日本版に勤務後、米マサチューセッツ工科大学(MIT)でフルブライト・フェローを経てフリーに。
国際情勢や社会問題、サイバー安全保障を中心に国内外で取材・執筆を行い、訳書に『黒いワールドカップ』(講談社)など、著書に『ゼロデイ 米中露サイバー戦争が世界を破壊する』(文藝春秋)、『モンスター 暗躍する次のアルカイダ』(中央公論新社)、『ハリウッド検視ファイル トーマス野口の遺言』(新潮社)、『CIAスパイ養成官 キヨ・ヤマダの対日工作』(新潮社)、『サイバー戦争の今』(KKベストセラーズ)、『世界のスパイから喰いモノにされる日本 MI6、CIAの厳秘インテリジェンス』(講談社+α新書)がある。テレビ・ラジオにも出演し、講演や大学での講義なども行っている。
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