儲けることが難しい「五輪ビジネス」に、なぜ日本企業は“お金”を出すのか:スピン経済の歩き方(2/7 ページ)
東京五輪が終わった。「感動をありがとう」といった喜びの声が広まる一方で、複雑な心境の人たちがいる。五輪のスポンサー企業や、五輪経済効果を期待していた業界のみなさんだ。なぜ複雑な心境なのかというと……。
残念な状況に
もうからないうえ、大金をはたいても企業イメージは上がらない。まさに踏んだり蹴ったりという「五輪ビジネス」の惨状に、「コロナさえなければ」と悔やむ企業関係者もいるだろうが、それは考えが甘い。もし仮にコロナがなくて「有観客五輪」だったとしても日本企業の多くは、遅かれ早かれ今のような残念な状況に追い込まれている。
五輪はイベントの構造上、チャリンチャリンとカネが入ってくるのはIOCだけで、開催国は決してもうかるものではないからだ。
今回、大会開催中にIOCのバッハ会長が「中止になっても保険があったのでIOC的には損はなかった」とポロッと言って大ヒンシュクを買ったが、実はあれが五輪というビジネスモデルの本質をついている。IOCは放映権とライセンスで金を集めて、イベントにかかる費用やそこにまつわるリスクは全て開催都市に負担させる。つまり、IOCにとって五輪は高見の見物をしているだけで大金が転がり込む、ローリスク・ハイリターンの権利ビジネスなのだ。
では、そんな調子でIOCからガッツリと“お金”を取られる開催国側に、どれだけ「うまみ」が残されているのか。「子どもたちに夢を与えられる」とか「アスリートのがんばる姿が生きる希望になった」というプライスレスなものを除くと、経済的にはマイナスしかない。
開催時期はメダルラッシュ報道と外国人が押し寄せた特需でなんとなく「景気が良くなったムード」が社会にまん延するが、それも1カ月足らずの期間の話なので景気はすぐに冷え込む。五輪グッズを買い漁っていた国民も、秋口には別のブームを追いかける。そのように効果が儚(はかな)く消える「打ち上げ花火的特需」であることに加えて、五輪不況が追い打ちをかけるからだ。
ご存じの方も多いだろうが、五輪は不況のトリガーになる可能性が高い。1988年の韓国・ソウル、92年のスペイン・バルセロナ、2000年のオーストラリア・シドニー、04年のギリシャ・アテネ、08年の中国・北京、そして16年のブラジル・リオデジャネイロなど五輪後に成長率が悪化している国が圧倒的に多いからだ。
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