儲けることが難しい「五輪ビジネス」に、なぜ日本企業は“お金”を出すのか:スピン経済の歩き方(7/7 ページ)
東京五輪が終わった。「感動をありがとう」といった喜びの声が広まる一方で、複雑な心境の人たちがいる。五輪のスポンサー企業や、五輪経済効果を期待していた業界のみなさんだ。なぜ複雑な心境なのかというと……。
五輪ビジネスに関わっても
「“すべての人のスポーツ”というオリンピック憲章の精神が忘れられた選手強化」「大衆から離れてゆく日本のアマ・スポーツ」「スポーツのナショナリズム化」(読売新聞 1964年10月6日)
五輪の商業主義に歯止めをかける素晴らしいレガシーだが、当時の日本人はこれを歴史の闇に葬った。「五輪は世界から大絶賛され、日本経済発展の起爆剤になった」という大本営発表と矛盾してしまうからだ。
東京五輪で銅メダルに輝いたマラソンの円谷幸吉氏が、メダルのプレッシャーから自殺に追い込まれたのはその3年2カ月後のことだ。
今回の東京2020大会も「五輪ビジネスに関わってもロクなことはない」というかけがえのないレガシーができた。今度こそ歴史の闇に葬ってはいけない。大企業はボッタクリ案件の五輪にさっさと見切りをつけて、メダルではなくアスリートに対して金を投じるべきだ。
次の冬季五輪は北京なので、日本以上にスポーツナショナリズムやメダル至上主義が炸裂するだろう。米国との対立が続けば「スポーツを介した戦争」のようになるかもしれない。アスリートが食い物にされる傾向はさらに強まる。
「うわ? あの企業、今どき五輪スポンサーなんかやってんだ。センスねえなあ、ガッカリだよ」なんて言われてしまう時代が、もうそこまで来ているのではないか。
窪田順生氏のプロフィール:
テレビ情報番組制作、週刊誌記者、新聞記者、月刊誌編集者を経て現在はノンフィクションライターとして週刊誌や月刊誌へ寄稿する傍ら、報道対策アドバイザーとしても活動。これまで300件以上の広報コンサルティングやメディアトレーニング(取材対応トレーニング)を行う。
近著に愛国報道の問題点を検証した『「愛国」という名の亡国論 「日本人すごい」が日本をダメにする』(さくら舎)。このほか、本連載の人気記事をまとめた『バカ売れ法則大全』(共著/SBクリエイティブ)、『スピンドクター "モミ消しのプロ"が駆使する「情報操作」の技術』(講談社α文庫)など。『14階段――検証 新潟少女9年2カ月監禁事件』(小学館)で第12回小学館ノンフィクション大賞優秀賞を受賞。
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