儲けることが難しい「五輪ビジネス」に、なぜ日本企業は“お金”を出すのか:スピン経済の歩き方(6/7 ページ)
東京五輪が終わった。「感動をありがとう」といった喜びの声が広まる一方で、複雑な心境の人たちがいる。五輪のスポンサー企業や、五輪経済効果を期待していた業界のみなさんだ。なぜ複雑な心境なのかというと……。
「五輪ってやばくない?」という認識
ただ、今回の巨額損失によって、わずかだが日本社会に「五輪ってやばくない?」という認識が広がる。個人的には、これは喜ばしいことだと思っている。五輪に対して巨額マネーを突っ込むことが不毛だという企業が増えれば、「アスリートにカネを出すほうが遥かに社会にとって有意義」という機運が高まるかもしれないからだ。
ご存じのように、アマチュアスポーツ、特にマイナー競技のアスリートは「スポンサーがつかない」という大きな問題がある。競技人口も観客も少ないので、企業から「PR効果がない」と軽視されているのだ。
実はこれまでの話と同じく、言われているほど効果がなくマイナスのほうが多い。メダルをとっても競技普及やスポンサー企業増加につながらないのだ。
カーリングの日本代表で、トリノ、バンクーバー五輪を経験した本橋麻里さんが、平昌五輪で「カー娘」で日本中がわいたとき、感想を尋ねられて「4年に一度起きるやつですよね」と冷静なコメントをしたことからも分かるように、タピオカブームのように瞬間風速的にマスコミが騒ぐだけで、固定ファンが定着しないのだ。
むしろ、「五輪が大事」と大騒ぎをするせいで、メダルを取れない競技が露骨に冷遇される。また、メダル獲得が至上命令の競技は、「誰もが楽しめる」という一般人の視点がどんどん欠如するので、若者や子どもから敬遠されていく。メダリストを多く輩出する一方で、中高生の競技人口が減少している柔道はその典型だ。
実はこの「五輪の弊害」は、1964年の東京五輪から指摘されている。閉会後、世界初の「国際スポーツ科学会議」が催されこんな批判が相次いだ。
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