著者プロフィール:川口雅裕(かわぐち・まさひろ)
組織人事コンサルタント (コラムニスト、老いの工学研究所 研究員、人と組織の活性化研究会・世話人)
1988年株式会社リクルートコスモス(現コスモスイニシア)入社。人事部門で組織人事・制度設計・労務管理・採用・教育研修などに携わったのち、経営企画室で広報および経営企画を担当。2003年より組織人事コンサルティング、研修、講演などの活動を行う。
京都大学教育学部卒。著書:「だから社員が育たない」(労働調査会)、「顧客満足はなぜ実現しないのか〜みつばちマッチの物語」(JDC出版)
人事部の責任範疇は広いが、もっとも重要な使命は「組織の活性化」であり、「人を活かす」ことである。その実現のために、顧客や市場の変化に合わせた組織づくりや、成果主義・職務給・役職定年といった処遇システムが検討され、ワークライフバランスやフレックスタイム制度などの就業(働き方)の仕組み、研修や福利厚生制度におけるカフェテリア化、表彰・褒章(インセンティブ)の見直しなどが行われ続けてきているし、さまざまな組織形態の考え方、マネジメントやリーダーシップのありよう、面談やコミュニケーションの仕方の変更、働きやすいオフィスの形といったアプローチも試行されている。
しかし、これらの策が奏功して組織や人材が活き活きしてきた、と実感するビジネスパーソンはほとんどいないだろう。上記のような策が、なぜことごとく空振りに終わるのか。それは、重要な見落としがあるからだ。
人事責任者が見落としているのは、「日本人の行動原理」である。当たり前だが、日本企業で働くほとんどは日本人だ。そして、日本人には欧米の人たちとは異なるモノの捉え方、感じ方、行動の仕方がある。個より集団、場の空気を読む、建前と本音、同調圧力が働く、横並び重視、結果より過程、長幼の序、恥の文化……などこれまでさまざまな識者・研究者が指摘してきた多くの特徴があり、それは外国人が驚いたり不思議に思ったりするレベルで今もなお、若者に至るまでしっかりと存在している。したがって本来、人事責任者は「日本人」はどのように感じ行動するか、そして「日本人によって構成される組織」に適した仕組みはどのようなものかを考えなければならないはずだ。
ところが現実は、あまりにも安易に欧米の組織論や概念、マネジメントシステムを受け入れてしまっている。だから上手くいかない。
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