例えば、同じ釜の飯を食う人たちとの関係を重視し、その場の空気を見ながら行動している人々を、人事制度や就業規則の改定によって変えようとしても無理である(何も変わらない)。他にも例えば、大きなニンジンをぶら下げて「ほら頑張れ」と煽っても、目立つことを嫌い、周囲と調和した状態が安定的に続くのを好む人たちには効果がない。欧米人相手に効果があったと思われる策が、日本で上手くいかないのはそういうことである。さらに言えば、「正社員制度」「職能給制度」「定年退職制度」といった日本独特の雇用慣習が、民族性とは違うレベルで日本のビジネスパーソンを特殊なものにしていることも見逃せない。
日本人や日本社会に関する論考は、実にたくさんある。日本人を相手にする以上、人事責任者はそれらを真っ先に学ぶのは当然であるし、日本人に関する造詣がないのに、欧米型の処遇システムやマネジメントを導入することの成否、あるいはどのようにカスタマイズすれば良いかを的確に判断できるはずがない。専門分野の担当者ならまだしも、責任者ともなれば「組織の活性化」「人を活かす」という目的のために日本人とは何かを問い続け、日本人について学び続ける姿勢が求められるのである。(川口 雅裕)
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