三井不動産がJAXAやベンチャー企業と取り組む宇宙ビジネス創出 「宇宙への道は日本橋から続く六つ目の街道」:X-NIHONBASHI Global Hub(2/3 ページ)
三井不動産は4月、JAXAとの共創プロジェクト「X-NIHONBASHI Global Hub」を日本橋の室町三井ホールで開催した。米航空宇宙局(NASA)やJAXAのほか、米国で宇宙ビジネスに参入している日本企業の関係者がパネリストとして参加。同イベントを取材し、宇宙ビジネスに取り組む背景を三井不動産に聞いた。
日本橋に宇宙関連企業が集積
日本橋には現在、宇宙ビジネスの拠点としての機能が整備されている。2020年12月には、三井不動産が「X-NIHONBASHI TOWER」を開設。大企業からスタートアップ企業まで、宇宙ビジネスに参入する企業の活動拠点と交流の場を提供している。
実はX-NIHONBASHI TOWERの開設以前から、日本橋ではここ数年宇宙産業の集積が進んでいた。超小型人工衛星を開発・製造し、地球観測データを提供するアクセルスペースや、宇宙を舞台にした商社SpaceBDなどのベンチャー企業、それに日本航空宇宙学会などの組織も立地する。
これらの企業や団体の連携を図っているのが三井不動産だ。JAXAとのX-NIHONBASHIプロジェクトをはじめ、自社が持つビジネスマッチングのノウハウを生かして、国内だけでなく海外の宇宙機関と連携し、ビジネスプレイヤーをマッチングするイベントやプログラムを開催している。
三井不動産は自らが宇宙ビジネスのプレイヤーとして参入するのではない。日本橋を宇宙産業が集積する場所に育てて、日本の宇宙ビジネスの発信や、世界の宇宙ビジネスを日本に呼び込む役割を担おうとしているのだ。
三井不動産はなぜ日本橋で「宇宙」に取り組むのか
では、なぜ三井不動産は日本橋で「宇宙」に取り組んでいるのか。それは日本橋の歴史と関係があるという。X-NIHONBASHI Global Hubでは、三井不動産日本橋街づくり推進部の七尾克久部長が登壇し、宇宙への取り組みについて説明した。
三井不動産のルーツは、今から350年近く前の1673年に日本橋に開業した三井越後屋呉服店。江戸時代の日本橋は五街道の起点として、全国から人、物が集まる商業の中心地だった。20世紀に入って金融街と商業地としても発展した。
ところが、1990年代にバブルが崩壊。東急百貨店日本橋店の閉店や、山一証券の自主廃業によって街の賑わいは失われた。この頃入社した七尾氏は当時の様子を「当時はオフィス中心だったため、週末や休日は人通りも少なくなり、お店も閉まっていて寂しい感じがしたことを思い出します」と振り返った。
三井不動産は日本橋の企業と危機感を共有し、街が一体となって日本橋再生計画がスタートした。そのコンセプトは「歴史的建造物や伝統ある店舗、街の文化を残しながら、景観や水と緑の賑わいを蘇せながら、次世代に向けた新たな街の魅力を創っていく」こと。三井不動産は日本橋で開発している同社関連物件の床面積を、この20年間で大きく伸ばしている。
さらに街づくりの軸の一つとして、産業創造にも取り組む。日本橋では江戸時代から薬問屋が集中するなど、製薬会社が集積していたことから、2015年からライフサイエンスのイノベーション推進事業を始めた。産・学・官の連携を進め、資金提供なども実施。設立した社団法人の会員は500を超え、年間に500以上のイベントが日本橋で行われている。このライフサイエンスのノウハウを宇宙に生かそうとしていると、七尾氏は説明する。
「ライフサイエンスと同じように、日本橋においてさまざまな場の提供と活動機会の創出を通じて、宇宙関係領域のビジネスの拡大を目指しています。宇宙に関する研究や技術を、地球上の課題解決やビジネスの創造につなげるのは、街づくりを通じて社会課題の解決や、持続可能な社会の構築を目指す私どもの目的と合致しています」
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