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なぜハイブリッド車のエンジン始動はブルルンと揺れないのか高根英幸 「クルマのミライ」(2/5 ページ)

純エンジン車であれば、エンジン始動時にはキュルルルとセルモーターが回る音の後にブルンッとエンジンが目覚める燃焼音と共に身震いのような振動が伝わってくるものだが、ハイブリッド車にはそれがない。それはなぜなのか?

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 その秘密を解説する前に、エンジンの特性を理解してもらう必要がある。ここからはちょっと物理の話になってしまうが、物体には固有振動数というモノが存在し、特定の周波数を帯びると振動する特性がある。複雑に部品が組み合わせられたエンジン自体で見てもそれは当てはまる。

 スムーズに回っているように見えても、エンジンは各シリンダーの燃焼や回転運動によって振動が発生しており、それをお互いが打ち消すように点火順序やバランサーなどで調整されている。それでも特定の周波数ではエンジンが共振して振動が大きくなってしまうため、共振点(固有振動数となるエンジン回転数)はアイドリング以下の回転数になるように設計されている。

 エンジン始動時にブルンッと一瞬、振動が起こるのは、セルモーターが回した勢いからエンジンが目覚めた瞬間に、この共振点を通過するからだ。同様にエンジンを停止する時にも、振動が大きくなることを経験されているだろう。あれもエンジン回転が下降して共振点を通過するからだ。

 ではハイブリッド車はなぜ走行中にエンジンを始動してもブルンッと共振しないのか。その最大の理由は、強力なモーターにある。純エンジン車の場合、セルモーターはクランクシャフト後端に直結されたリングギアを回すことでトルク増幅を図るから、小型で高速のモーターを用いている。

 そのため始動時にはキュルルルとモーターの回転音が響き、動力はリングギアで減速されるため(トルク増幅と引き換えだ)、エンジンの回転数はそれほど上がらない。結果、エンジンが目覚めた時に初めて回転が上昇し、そこで共振点を超えるのだ。

 それに対してハイブリッド車は走行用や発電用に、セルモーターよりもはるかに強力なモーターを使っており、そのため減速してトルクを増やす必要がない。エンジン始動時には、共振点を飛び越えて回っているため、スムーズにエンジンが目覚めるのだ。したがってキュルルルもブルンッも起こらないのである。

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